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扉の向こうには行きたくない 彼の側にいる限り、この安全で安心な幸福の檻の中で行きていける 彼だけを見て、彼の事だけ考えて、彼にだけ与えられる痛みと恐怖...そして彼だけにしか感じない喜びを胸にずっとここにいるのだ それ以外のものは必要ない それ以外を知る必要はない それはきっと他には何もいらないと思えるくらい幸せなことだ お揃いの赤い指輪をはめた手が二つ、正反対の動きを見せる 縋り付く手と振り払う手 「ユウのためだからっ...」 "離れるのはユウのため" けれど、ユウにはそれを理解することはできない 離れる事は捨てられる事 捨てられる事は嫌われる事だとそう教えられてきた 「やぁっ...みぃくんっ!!みぃくんっ!!」 何度となく引き剥がされる手を伸ばしミツルのシャツを両手で掴む 嫌だ嫌だ嫌だ...絶対に嫌だ あまりの取り乱しように、彼も椎名もどうしたらいいか分からないほどだった テコでも離れようとしないユウに慌てた椎名が一歩前に出た 「ユウくん、ちょっと落ち着こうか?」 彼から引き剥がそうと肩に手を置くと、ユウは暴れるようにその手を振り払った そして次の瞬間、椎名が急に大声をあげた 「わっ...ユウくんっ!!痛いっっ!!」

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