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手の感覚はなくなっていた 剥がれた爪も、折れた指もむき出しになっているのになぜか痛みは感じなかった きっとほかに痛みがあるからだ ズキズキと胸が痛んで息ができない 「っ....」 何度となく繰り返し叩き続けた拳をもう一度振り上げると手首をぎゅっと掴まれた 「もういいよ」 「....?」 ユウがゆっくり振り返ると椎名が自分の手首を掴んでいた 「うぅ..」 叩いていないと彼に気づいてもらえない ユウはその手を振り払おうとするが、掴まれた力は優しいはずなのにどうしても外れてくれない ふるふると首を振って嫌だと椎名に訴える けれど椎名はしゃがみこんで自分の肩にユウを引き寄せた 「それ以上やったらまた痛くなるからもうやめようね」 やめたくはなかった....もしかしたら扉を叩いた音に気づいて出てきてくれるかもしれないのに 「ユウくんはもう十分頑張ったから、もういいんだよ」 足りない...きっと足りないのだ 「もういいんだよ、大丈夫だから」 「....っ」 ”大丈夫だよ” 椎名の言葉はズタズタに傷ついたユウの心を包み込んだ 彼とは違う声と違う匂いと違う感触を確かめるように、ユウは椎名の首に手を伸ばす 「大丈夫だよ、大丈夫」 椎名はユウを抱え上げて頭を撫でながら何度もこの言葉を繰り返した ユウは椎名の肩に頬を押し付けながら遠ざかっていく扉をずっと見つめていた

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