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家事の苦手な椎名が用意したユウへの最初の食事はカレーライス ご飯を炊いて、レトルトのカレーをかけただけの簡単なやつだった 「こんなのでごめんね、急だったから買い物も行けてなくて」 申し訳なさそうにする椎名を見つめてユウは首を傾げた 初めての食べ物にどう対処したらいいのかわからないようだ 「食べてみようか、辛くないといいんだけど」 椎名がそう言った時、ユウはおもむろにカレーライスの中に手を突っ込んだ 「ああっ!!ダメダメ!ユウくんっ!!」 「う...?」 慌てる椎名をよそにユウはその手を口に運ぶ ユウはスプーンを持って自分で食べることもできないのだ 「火傷してない?大丈夫!?」 「...?」 何が大丈夫なのか、何がダメなのか、なぜ椎名が慌てるのか....ユウにはなにもかも分からなかった けれど、ユウは手と口元をタオルで拭かれている間、椎名の困ったような顔を見てなんだか悲しくなった きっと自分の世話をする事は大変なのだ だって彼もそんな顔をする時があった 知らない、分からない、できないばかりだったからきっと彼にも捨てられたのだ 何も分からないくせにそんなことだけは分かる だけど、それをどうしたらいいのかは分からなくて、悲しくなってしまった

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