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「かち...かち...かち...」 秒針に合わせてユウは頭を左右に揺らしている 「ユウくん、もうそろそろ寝ないと」 ユウは涼介が帰った後、ほとんど食事もとらず時計ばかりに気をとられていた 「かち...かち...あぅ...」 「それはだめ」 気づくと指を口に咥えようとするユウを椎名はその度にたしなめていた これで何度めだろう...幼すぎる仕草は寂しい気持ちの表れだった 今日はいろんなことがあったんだ....無理もない 愛する人との別れ、新しい環境、知らない人との出会い 幼すぎるユウにとって消化するには時間がかかることばかりだった 「疲れちゃったよね?もう寝ないと明日起きられないよ」 どんな言い方をしてもユウには響かず、心ここにあらずな様子だ 「ユウくん、寝たくないの?」 「......」 「1人で寝るのが怖いなら一緒に寝てあげようか?」 ユウは椎名と目を合わせると眉を寄せて困ったような表情を見せた 椎名の言う通りだった ユウは一人で寝るのが怖い 今まであれだけ、彼と一緒に寝ていたのだ きつく絡んだ腕の中で、彼の鼓動を感じながら甘い夢を見る それがなければあの白い部屋で一人ぼっちだった頃と同じだ 冷たい床で寝ころんでいつ来てくれるか分からない彼を待ち続ける 好きな人がそばにいてくれる幸せを知ってしまったから1人の辛さが一層辛い 「みぃくん....」 息をするように呟くと、途端にユウの目から涙がポロポロと溢れてしまった

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