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「ユウくんはただ、笑顔でいてくれればいいんだよ」 「....?」 「ほらほら、笑って?」 ユウの頬をツンツンとさして椎名は笑う それにつられるようにユウは口角を少し引き上げた 「やっぱり、ユウくんは笑っている方がいいな」 ユウが少しだけ笑えた事に椎名はホッとした このまま笑顔まで失くしてしまったらどうしようかと心配していたからだ 表情を失くしてしまうくらいなら泣ける方がいいのかもしれない 「今は寂しいけど、その代わり僕がずっと一緒にいてあげる」 椎名は自分の考えをユウに話して聞かせた 彼が立ち直るまでそばにいてあげる 彼が迎えにくるその日まで君が寂しくないように 君がずっと笑顔でいられるように 「ミツルくんがが迎えにくるまで一緒にいてあげる」 そして、椎名はユウの左手を顔の前に持ち上げてみせた そこからユウの小さな小指に自分の小指を絡ませて弾ませる 「これ、覚えてる?」 「う....?」 「ゆびきりだよ、約束って言葉は忘れちゃったかな」 "やくそく" その響きを聞いた時、ユウは目を見開いて椎名の顔を見上げた 椎名との間に絡んだ指が浮かんでいる

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