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第3話*

彼はベッドの背にもたれるようにしてユウを膝にのせていた ユウは後ろ抱きされたまま彼の膝の上で一人遊びをしている 彼の長い指を握ってみたり、自分の小さな手と彼のを合わせてみたりしながら楽しそうにしている 彼はユウの髪にそっとキスをして、絡んだ指を捕まえるように握り返した 「爪が伸びてるね...切ろうか」 そういうと膝からユウを降ろしてベッドから立ち上がる ベットの上で一人残されたユウは不安そうに彼の行く先を見つめていた すぐに寝室に戻ってきた彼の手には爪切りが握られていた 「手...貸して?」 ベットに腰かけるとユウの手をとって、その小さな指先にキスを落とした そして爪を切ろうと刃先を爪にかけた時、唐突にあることを思いついた 「ユウ、ごめんなさいって言ってみて?」 彼の言葉にユウは首を傾げるだけで、唇は閉じたままだ 「ご、め、ん、な、さ、い」 今度はゆっくり大きな声で言い聞かせてみせる それでも黙ったままのユウの口に彼は自分の親指を突っ込んで無理やりこじ開けさせた 「言えよ、ほらっ!」 「うぁ...ぁ...」 無理やりこじ開けさせられた事でユウは今、自分が怒られていることを知った 「ご......ほら言って?」 「ご...?」 「そうそう...次はめ...」 「あ...」 「あ、じゃねーよ!」 吐き捨てるように言うと彼はなんの迷いもなく爪切りをバチンと握った 「ひぃっ...」 「次も間違えたら、これだから」 深く抉られるように切られたユウの人差し指の爪の間からじんわりと血が滲んだ 「め...ほら言って?」 ユウは彼が何を求めて何を望んでいるのかをなんとなく理解することができた これから何をして、何をしてはいけないか...緊張を張り巡らせて考える 背中に冷や汗をかきながら言われた言葉を頭の中で繰り返す 「め!」 正しく言葉を発すると彼はユウの瞼にキスをして「よくできたね」と、とびっきり笑顔を見せた 彼が笑ってくれるとうれしくなって、自分の行動が正解だったことに安堵しながらユウははしゃぐような声をあげた 「ご!めんなっさい!」 たどたどしく全部言い終えると彼は目を丸くして驚いていた 「すごい!すごい!ユウ!すごいよ!」 彼は大袈裟に褒めて頭をよしよしと撫でまわす 「じゃあご褒美あげるね?」 彼に頬を舐め上げられると、ユウは嬉しそうに顔を摺り寄せた ーー彼の言うとおりに行動できたことがうれしい ユウは思わず顔を綻ばせた そんなユウを見ると、彼は褒めてやりたい気持ちと同じくらい物足りなさを感じてしまう 少しだけ考えるようなそぶりを見せてからにぃっと口の端を引き上げた 「でも、やっぱり痛い思いしてからの方が気持ち良くなれるよね」 そしてユウの手をとりあげて深く切った指先にもう一度爪切りの刃をかける 「!」 爪と肉の間に刃が食い込むと薄い爪がゆっくり浮き上がり始めた ミリミリとほんの少しずつ剥がれはじめる指先から激しい痛みが上がってくる 「あぁぁぁ....!!」 指先から全身に痛みが駆け抜け、額から脂汗が一筋流れる 「爪、はがしちゃおうかなぁ?」 彼は平然と言ってのけた ユウの悶える声は、彼を興奮させる以外の何物でもない 片手を奪われた状態で、その痛みを堪えながらユウはさっき覚えたばかりの言葉を繰り返しだした 「ごめんなさい、ごめんなさい...ごめんなさ...」 突然のユウの反応に彼も驚きの声を上げた 「ユウ...意味分かっていってんの?」 むろん言葉の意味をユウは理解できなかったけれど、それでも必死になって繰り返した 「はぁっーーもういいよ!」 ひたすら繰り返すユウに彼はため息をついてその手を振り払った そのままスッと立ち上がり爪切りを持ってリビングまで行ってしまう 離れていくその背中に怒りの炎が燃えているのがユウには分かる 彼の機嫌を損ねてしまったこと後悔してしまう なぜならば彼に痛めつけられた後は決まって優しくしてもらえるのを知っているからだ ユウは立ち上がり自分のそばから離れてしまう彼の服の袖をひっぱり、行こうとするのを止める そして自分の指を10本、彼の目の前に広げてみせた その行動をみて、彼は驚きつつ自分の調教の成果を感じて胸が躍った 自分の態度を見て怒らせてしまったことに詫びを入れようとしているのが分かったからだ 「へぇ!えらいね?ユウは全部くれるの?」 クスクス笑いながら目の前に並べられた指をどれにしようかと選んでいく 差し出された指は恐怖からかどれもピンと張っていた 「でも、一本でいーや、残りは後に取っとくよ」 そういって選んだ指はさっきまで執拗に剥がされかかった指 せっかくだから同じ指にしてあげようとそれに決めた彼は深爪に血が滲む指を口に運ぶ 爪を軽く噛みながらユウの目を射るように見つめて口の中で転がした 「いっ...!ぃ!」 ねっとりと舌で絡めたりわざと歯を立てたりしながら十分にふやかしてその時を待っていた ユウの指が十分にふやけたのが分かると彼は爪を噛みちぎるように強くかじりついた 「!!」 思わず引いてしまう手を強く握られ容赦なく指ごとかみ砕こうとする歯 ユウは地団駄を踏んで抵抗し、目からはボロボロ涙を流していた そのままベリッと篭った音が聞こえるとそこに針のような痛みが刺さった それは爪が剥がされた痛み そのまま傷口をグジュグジュと唾液まみれにしてふるふると痛みに耐えるユウを眺め続ける 「はい...おりこうだったね」 ようやく彼が口から指を引き抜くと赤色が混じった唾液が糸を引いて流れた そしてべぇっと出された舌の上には薄く小さな爪が乗っていた 彼はそれをベットの横のサイドテーブルに置かれた小物入れの小さな瓶に大事そうに入れた うっとりする目で小瓶の中身を見つめながら「10個揃うの楽しみだね」と微笑んだ

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