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第13話*
先に終わりを迎えてしまったユウは彼に倒れこむように抱きついて静かに呼吸を整えていた
「ユウ...もうちょっとだけ頑張って」
彼は休ませることなくその身体を突きあげて堪能していく
爪の剥がれた指のふやける感触、血の味、虚ろなユウの顔と額から流れる汗の匂い
身体にかかった精液と今も自分を咥えて離さない小さな蕾
これらが全部、すべてが思うが儘だと思うとたまらない
無理をさせてでも、この小さな体に自分を刻み付けておきたい
そのためならなんだってやる
頭の先からつま先まで全部自分で埋めていきたい
そしてそれをユウも望んでほしい
「んぁっ...はッ....いくっ」
小さく声を漏らして絶頂はユウの中を満たしていった
彼は汗ばんだ体を抱きしめてお互いの体温を確かめ合った
こめかみに流れた汗を吸って、髪にキスをして耳に唇を寄せる
「ユウ大好き、俺から離れないで」
彼が思わず零した言葉にユウはゆっくりと顔をあげた
見上げた額にキスを落とすとユウはよじ登るようにして彼に頬を摺り寄せた
「可愛い、ユウ大好き」
ユウはうっとりするように彼の言葉を聞いていた
ベットの中で彼はユウを抱き抱えながら眠りについていた
子供体温と重みがなんだか心地いい
ユウがふと目を覚ますと頭の上に彼の寝顔を見つけた
彼を起こさないようにそぅっと動きながら部屋の中を見渡していた
ユウの目線の先にはベットの脇のサイドテーブルの小さなガラスの瓶
その中に血が付いた爪が二枚入っていた
思い出したように自分の手を見てみると指に包帯が巻いてあった
それを見るとうれしくなって透かすようにずっとそれを見ていた
痛みなどどこかへ飛んでいってしまった
ふとユウの頭の中に昔の記憶が蘇った
ーーといってもここに連れて来られる以前の記憶はあまりない
あったとしてもそれをどう説明すればいいかわからない
ただ覚えているのは何もなかったこと
まるで自分がどこにもいないようなそんな扱いしかされなかったことを覚えている
食べるものもほとんどもらえなくて、いつもお腹が減っていた
小さな箱のようなものに入れられて、丸くなってじっとしていた気がする
たまに声を出せば殴られて痛い思いをした
だけどこんな風に手当てをしてくれた人はいなかった
誰一人、自分の名前を呼んで抱きしめてキスをしてくれる人などいなかった
いつもの部屋は何もなくて嫌い
昔のことを思い出すから....だけどあの部屋にいると彼が来てくれる
いい子にしていたらほめてくれて、ごはんもくれて、着替えもしてくれて....それからそれから...
彼はいっぱいいろんなことをしてくれる
彼のことが好きで好きで仕方ない
無意識にじぃっと熱い眼差しを向けているとようやく彼は目を覚ました
自分を見つめるユウと目が合うと髪を撫でて微笑む
「寝ちゃった...ごめんね..お腹すいた?」
彼はユウを身体から降ろすと起き上がりベットから降りようとした
ユウはつと彼の手をつかんでいかないでほしいと目で訴える
彼はそんな少年にクスリと笑って「どこにも行かないよ?」と笑う
彼がキッチン向かいで何か作っている間、ユウはベットの上でそれをぼんやりと眺める
漂ってくるいい匂いは空腹を誘う
そのあとに食べさせてもらったのはよく分らなかったけどすごくおいしかった
口を開けてそこに流し込んでもらうのを繰り返して口の端についたのは彼が舐めとってくれた
最後はあのとびっきりおいしいクリーム色の甘いやつ
舌の上にのせて味わって、もっと欲しかったけど、それはちょっとしかないみたいですぐに終わってしまった
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