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第14話

冷たいタイルの床は裸足で歩くとペタペタと音が鳴る 自分のあとを追いかけてくるみたいで、それが面白くてわざと音が鳴るように歩いてみたり走ってみたり.... その場で足踏みしてみたりしていた そのうち足の裏にほこりがついてザラザラしてなんだか変な感じ 床に指で絵を描いて暇を持て余す 窓の光が眩しくてのぞきにいけば、その小さな窓にうっすら自分の姿が映った 前髪が目を覆うほどの長さになっていて、息を吹きかけるとふわりと浮いてまた戻ってくる その姿を何度も窓に写してユウは一人で笑っていた 彼が来るのはもう少し先でまだ一人で過ごさなくてはならない 一人で過ごす時間が少しでも楽しいようにユウは自分なりに考える 窓の外にはこの間見た生き物はいなかった きょろきょろしながら探したけど見当たらなくて... 彼がそれのことを「とり」と言っていたのを思い出した もっと分ればいいのに 言ってることも、されてることも全部わかればいいのに 言いたいことが伝わればきっともっと彼がほめてくれると思う 「と......」 聞こえた通りに口に出してみる 喉が動いたことのない動きをした気がした 「と....い..?」 もうちょっと...もうちょっと違う音だった気がする 「と...り..」 そう...これだ...この音... 自分から声が出たことに感激してもう一度今度は大きく声を出してみた 「と...り..!」 うれしくてうれしくて何度も何度も繰り返しては手のひらで自分の頬を包んで笑う 早く彼に聞いてもらいたい 早く早く彼に会いたい ******** 日が暮れて部屋の中は真っ暗だった いつもは暗くなる前に来てくれるのに今日は来ない 何度も扉を眺めて、ちょっとした物音に立ち上がったり...だけどそれは気のせいで扉は閉ざされたまま開く気配はなかった 壁にもたれるように座っていたユウはずるずると床に寝そべって固いタイルに頬をつけた 真っ暗の中では何もすることがない 外は何も見えないし、光が差さないせいでなんだか寒い 「くしゅんッ!」 くしゃみをしてごしごしと鼻をこすりながらただ時間がたつのを待っていた だけどその日待っても待っても彼は来なくて、いつの間にか寝ていたユウは窓から指す朝日で目を覚ます 固い床で寝ると体が痛い 冷たくなった体を擦りながら起き上がって扉に近づいてみる 扉に手をかけてみたけれど案の定開くことはなかった ユウは言いしれぬ不安に駆られて扉の前に座り込んだ いつ彼が来てもいいように、もし寝てしまってもすぐに気づけるように...

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