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涼介の提案は彼の会社で産業医をすることだった
「おかげさまでうちの会社も兵隊さんが増えまして....どうせなら置こうかって話が出てたんだ」
今はブラックだ、パワハラだとどれだけ全うにやっていたとしてもそういった問題が起きてくる時代らしい
涼介の方針としては社員に過剰労働させる気はないがこう人数が多いと把握しきれなくなってくる
なにかあった時に会社に産業医がいることで会社としても万全の体制が取れるのではないか...というものだった
「せっかく、こんな近くに医師免許もった奴がいて、しかも無職って....お誂え向気だろうが」
「そんなことって....」
「うちも得して、お前も得して、それ以外になんか問題あんの?」
確かにありがたい話だ
こんな状況では就職活動さえもままならない
「でも....」
そんなことまで涼介に頼っていいのだろうか
涼介にはユウの就籍に対して力になってもらっている
それに加えてそこまで世話になってしまってはその恩を返すことはできそうにない
こんなにも条件のいい仕事先に快く返事ができないでいる椎名に涼介は付け加えた
「ちなみにそこにはユウを連れて出勤できるように話はつけてあるんだけど...」
「えっ!?」
「もう話はついてんだよ、ここでお前が頷いてくれないと困るわけ、分かる?」
もう後には引けないと涼介は訴えている
自分にはもったいないほどの好条件だ
もったいなさすぎて、それが逆に椎名を狼狽えさせる
「最高じゃん?なに迷ってんの?」
「最高すぎて...ここまでしてもらっていいのかな......」
煮え切らない態度に涼介は眉を潜めて舌打ちをする
「お前なぁ、ダチの行為は素直に受け取れよ」
テーブルには勤務条件の書類が広げてある
涼介の指先が文面を一つ一つなぞって、早く頷けと催促する
「う....」
涼介の前で椎名が頭を抱えていると服をクイッと引っ張られてる感覚に顔を上げた
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