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手探りでナイトランプをつける オレンジ色の光が優しく手元を照らすとサイドテーブルに置かれたぬいぐるみが浮かび上がった 茶色の毛の子犬のぬいぐるみ 首元にはブカブカの首輪が引っ掛けてある 別れるときにユウにお願いしてもらったものだ 一人になるのがさみしくて少しでもユウを感じられるものを欲しがるなんて情けない それを頬ズリするように顔を近づけると、ふわりとユウの匂いがした ここにいる間、肌身離さず抱いていたせいで匂いが染みつき、形もいびつになっている 昨日よりも、今日、今日より明日、ユウの面影が自分の手をすり抜けていく ーーこの半年、ミツルはユウと離れたきり、一度も会ってはいない お互いの生活が落ち着くまでは....というよりはユウが外の生活の馴染むまでは会うことはできない 行き来することで現状に混乱を招くからだと椎名が決めたことだった その間、ミツルは定期的に椎名に会い、彼からカウンセリングのようなものを受けて過ごしていた 椎名はミツルに会うたびにユウの近況を離して聞かせ、時々写真を見せたりする 笑顔の写真にホッとして、けれど自分以外のものに囲まれて見せる顔に複雑になってミツルは椎名に会うたびに憂鬱になった 話を聞かされるたびに、自分の知っているユウがどこにもいなくなってしまうようで怖くなる このまま自分はユウと過ごした時間よりも多くの時間を一人で過ごすことになるだろう もし椎名の言う通り、自分が立ち直り迎えに行ける日がくるとしたら... その時ユウは自分のことを覚えていてくれているのだろうか また好きだといってくれるのだろうか..... 本当は今すぐにでも攫ってしまいたい衝動は衰えることもなく、自分の中で燻っている きっとこの限り、ユウに会えることはないんだろうと思うとまた気持ちが沈んでいく

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