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おせっかいで馴れ馴れしいおっさん マナトにとって目の前の男はそんな印象だった 頼んでないのにわざわざ見ず知らずの奴の手当てしてバカみたい 別にこんなの要らないのに.... それでも左手にはきれいに巻かれた包帯 他人に手当てをしてもらうこともマナトにとっては久々で ましてや恋人でもない相手からの完全なる善意の行為は初めてだった お礼をいうべきかマナトが迷っているとその男は突然大きな声で狼狽えだした 「あぁっ!!大変だっ!!時間かかっちゃったっ!!」 「あの...」 「ごめんねっ!!抜け出してきたから早く帰らないとっ!!」 慌てふためきながらバタバタとカバンを抱えて走り出してしまう 「えっと、あのっ...!?」 ”引きとめるのも聞かずに行ってしまう” マナトがそう思った時、その男は走り去る勢いのまま、急に方向転換しながら戻ってくる 「あのさ!もしなにか困ってるなら連絡して!?」 「は?」 「じゃぁっ!!お大事にねっ!」 マナトの胸ポケットに無理やり何かをねじ込むとまたあわただしく走って行った 「な...何なんだよ」 ぽかんとしながらマナトは男が走り去っていった方向を眺めた 呆然としながらさっきの出来事を頭の中で整理する 変な奴...勝手に手当てして勝手に走り去っていった なんだか分からないままふと足元に目をやるとコンビニの袋が落ちていた 「あれ...これ忘れ物?」 おそらくさっきの男が慌てて忘れいったものだろう 何気なしに中を覗いてみるとプリンがいくつも入っていた こんなに食うの?男のくせに...... ますます謎の男の事を思い浮かべては首を傾げて、胸ポケットに手を当てる 「あ?名刺...?」 無理やりねじ込まれたものは名刺だった "椎名 マサキ" そこにはさっきの男の名前と連絡先がきれいな活字で記してあった

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