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「遠慮しないで入って」 その男に連れられて通された部屋にじゃ「医務室」のプレートが掛かっていた 開けた扉から広がる部屋は真っ白で清潔感があふれていた そこへ眩しいくらいの日の光が注ぎ込んでいてマナトは目を一瞬細めた 丸いテーブルにイスが向かい合わせで二つ 奥をパーテーションで区切ってあり、そこからベットの足が見える まるで学校でいうところの保健室のようだった けれどマナトはまともに学校に通ってはいなかったし、思い出も皆無だ それよりももっとこの部屋にしっくりくる言葉が思わずついて出る 「カウンセリングルームみたい...」 戸惑うように足が一歩引いたところでマナトの背中に暖かい手が触れる 「さぁ、あそこに座って」 そっと押されるように促されてマナトはイスに腰かける 部屋をぐるりと見渡しててからその男に声をかける 「椎名さんて....お医者さんなの?」 すると彼は思わぬ来客をもてなそうと動いていた手を止めて向き直った 驚いたような顔でマナトを見つめて言った 「そっか、自己紹介まだだったね?!」 そういうとわざわざ姿勢を正して胸元にかけられて名札を見せてニッコリと微笑んだ 「僕は椎名マサキって言います。ここで産業医をしている...っていても名ばかりの雑用だけどね」 「医者なのに....ここで働いているの?」 「医師免許があるってだけ、そっちの方面は向いてなかったみたい」 少し照れくさそうに笑う男を眺めながらマナトは一人で納得した そっか....だからか 医者だからあんなに包帯を巻くのが上手かったんだ すると今度は椎名がマナトに質問を投げかけた 「君の名前は?」 「あ...マナト...」 「マナトくんかぁっ!いくつ?だいぶ若そうだけど...」 そう言われたマナトは身体を乗り出すようにして答えた 「はた...20歳!!」 食い気味に声を出したマナトに椎名は目を丸くしてきょとんとした 「そ...そう?若く見えるね...」 マナトは内心冷や汗をかいていた なぜなら嘘をついたから マナトの本当の年齢は17歳...あと3か月で18歳だ マナトを好んで買おうとしてくれた男たちはみんなマナトの年齢を聞いてこう言うのだ 「犯罪者にはなりたくないからなぁ...せめて18歳じゃないと」 そう言われ続けては嘘も自然につくようになった 17より18歳...未成年より20歳の成人 その差は小さいようで大きな壁としてマナトの前に立ちふさがっていた

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