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ユウと椎名

ユウガ、ゼンブワルインダヨ 目の前で倒れてしまったあの人も、ご飯を食べさせてもらえない自分も、床を手足で歩かされることも、、、みんなみんな ユウガ、ゼンブワルインダヨ 「ご、、、めらさ、、、」 そう言われて急に顔が熱くなって、ボタボタ涙が溢れていく 「嘘つきなユウは大嫌い」 嫌いは怖い 怖いは痛い 痛いは嫌い 同じ言葉が頭をグルグル回っていく 「ご...めな..さ.....うぁぁぁん」 どうしたらいいのかわからない わからないから泣くしかできない 「泣くぐらいなら嘘つくなよ」 彼は泣き噦るユウの首輪ごと掴んで寝室に引きずっていく 窒息しそうなほど苦しくて、怖くてユウは叫び声をあげた 「きゃぁぁぁぁあ!」 そのまま寝室に投げ込まれて壁に身体を打ち付けた 「ひっ、、、うぅ」 ズルズルと床に倒れこむユウの腕を掴んで無理やり立たせて窓に押し付ける 窓は高くて半分くらいしか外が見えなかった 「嘘ついたのはなんで?言えよ」 顔を手のひらで押さえつけられてギリギリと指先に力をいれられた 「う、、ぁぁ、、」 彼の腕から逃れたくても逃れられない こんな風に彼が怒ってしまうとユウはどうすることもできない ただ彼の言うことを聞いて怒りが収まるまで耐えるしかなかった 窓の外側になにを見たのか、、、、それを言わない限り許されることはない 「と...」 「あぁ?」 凄む彼が怖くて、言葉を出すのを躊躇してしまう 「と...ぃ」 彼に初めて聴かせる覚えたての言葉 「と...り...」 「とり?」 「とり...ぅ...と...とりぃ...」 ひきつけを起こしながら彼に必死に訴える すると顔を掴んでいた手が緩んで離れた そのままストンと床に座り込んでしまう 「とり...ユウ、もしかして、鳥がいたのを内緒にしたの?」 目線を合わせるようにしゃがんで彼は不思議な顔をした 何度も頭を振ってうなづくと涙がパタパタと床に跳ぶ 自分でもなんでこんなに泣くのかわからなかった 大嫌いといわれたこと 「とり」をみたこと 嘘をついたこと 怒られるかもしれない恐怖 「うぅーーー 」 「もしかして...俺が鳥が好きって聞いて怒ったから?」 ユウは彼をじっと見つめて涙をボタボタ流し続た 「なんだぁ、鳥かぁ、ユウ好きなんだもんね」 彼はホッとしてしたように泣き噦る身体を抱き寄せる まるでスイッチが切り替わるように、その顔は穏やかで抱きしめる腕は優しい 「心配したんだからね」 なだめて摩って慰めてーー 抱き寄せられた腕のなかでユウは泣きながら 「ごめんなさい」 と何度も何度も繰り返した

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