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ユウと椎名
「大丈夫だよ」
強張らせたユウの頭に椎名はポンと手をのせた
固く閉じた目がゆっくり、椎名を伺うように開いていく
完全に目が開いた時、ユウは椎名の顔を不思議そうな顔で見ていた
「心配しなくていいよ?僕は君を傷つけたりしない」
僕は誓って君を傷つけたりはしない
僕は彼と違う
そのことを理解してもらうにはまだ時間が必要だ
「ね?お友達になろう?僕とユウくん」
まだわからなくてもいい まずは心を許してもらうことからだ
指をいじる手を自分のと絡めて握ると、すこし困ったような顔で椎名を見つめる
「お友達だからユウくんのこといっぱい知りたいな」
椎名が話すたびにユウはなんだかわからないけど耳を傾けているようだった
椎名は徐々に自分の感覚を取り戻していく
まずは自分がユウにとって危害を加える人間ではないことをわかってもらわないといけない
優しく諭して心に語り掛ける
ユウは下を向いたり目線を外したりしながらそれでも椎名のことが気になって見える
次に目が合ったとき、椎名はもう一度聞いてみた
「外に何があったの?」
するとユウは椎名の目を見ながら絡んだ指先をギュッと握った
不安そうな顔で椎名を上目遣いで見た
「僕は怒ったりししないよ?....だから教えて?」
ニコリと笑ってその手を握りしめた
するとユウの唇がかすかに震えた
「...なぁに?」
来た!!椎名は心の中で思いながら焦る気持ちを悟られないようにユウに十分、時間を与えながらその時を待った
その小さな唇が消え入りそうな声を紡ぎ出したのはそれからしばらくたってからだった
「....ぃ...」
「え....?」
よく聞き取れなくてもう一度聞き返した
すると今度は少し大きく口を開けていった
「と.....り...」
それははじめた聞いたユウの言葉
「とり?とりって言ったの?」
ユウはおびえるように椎名の顔を見て、小さく頷いた
「とり....鳥か!外に鳥がいたんだね!そっかぁ!」
大げさに喜びをみせる
「すごいなぁ!ユウくんは!とりを見つけたんだね!偉いなぁ!すごい!!」
戸惑いながらもユウはそんな椎名の言葉に少し嬉しそうに、頬を赤く染めていく
「ユウくんは鳥が好きなの?」
椎名がそう聞いたとき、ユウの表情はみるみる暗くなってしまった
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