「ユウくん？」 ユウは 下を向いて唇をぎゅっと結んでしまった せっかく話始めたのにーーーなにがいけなかったのか つないだ手を揺らしながら閉ざしてしまったユウに椎名は続けた 「ユウくん？鳥さんはどんなだったの？教えてよ」 「.....」 「ユウくん？」 下を向いたユウを覗き込んでみると、その目に涙があふれて今にも零れそうだった 「どうしたの？」 椎名が気づくのと同時ぐらいに一つ瞬きをすると、左目かポロリと涙が零れた すると堰をきったようにユウは声をあげて泣き出してしまった 「ぅあぁぁあん」 「ご...ごめん！！ユウくん！泣かないで？！」 椎名は焦ってユウを泣き止まそうとするが、なだめればなだめるほど泣き声は大きくなっていく 「ごめんね？もう聞かないから！ごめん！」 「ひっく...グス....っく」 泣きじゃくるユウは両手で目をこすりながらひきつけるように息をしている 「そんなに擦っちゃだめだよ」 椎名はつながれてた両手の平でユウの顔をぬぐってやると、真っ赤な目で椎名を見上げて涙を止めた 「良かった...もう泣かないで？」 そういうのもつかの間、また顔をゆがめて泣き出してしまいそうだった 「あぁ....ユウくんてば....」 「泣かないで」そう言いかけたときユウは小さな声で言った 「ご..めんなさ...い」 ユウから発せられる言葉はどれも消え入りそうで一瞬聞き逃してしまいそうなくらいか細い まるで言葉を話すのを怖がっているみたいだった 二つ目の言葉は「ごめんなさい」 それは謝罪の言葉 なぜ泣きながら謝るのか理解できなかった ユウは一言謝ったきり、それからはただ泣くだけで何も言わなくなってしまった 「ユウくんがなんで謝るの？」 椎名が何度聞いても答えは返ってなく、何を聞いても、どんな言い方をしても、答えられないようだった 椎名もこれ以上はあきらめて、ユウが落ち着くのを助けるように手を握ったりしながらなだめた ひとしきり泣いた後のユウは疲れたようにフラフラして、今にも倒れそうだった それでも椎名の膝の上から動かないし、眠らないようにうとうとする自分を無理やり起こしているようだった 椎名は手錠でつながれた腕の間を見せて「こっちに来る？」と聞いてみた するとユウは自らその腕の輪の中に入り込んで胸元に顔をよせた 「狭くない？苦しくない？」 ユウはそのまま何も言わずに静かにそこに収まって、しばらくすると寝てしまった 小さな寝息をすぐそこで感じながら今までのことを椎名は頭の中で整理していた 今のところ話した言葉は「とり」と謝罪の言葉 話せなくても理解できる言葉があること 例えば....こっちに来て..とか...自分の名前も認識はできている もしかすると言葉を知らないだけなのかもしれない どのみち僕はここにいるしかないんだ チャンスならいくらでもある ここから出るカギはこのユウにあると椎名は考えていた