*** 俺が笑えば条件反射みたいに笑う 握った手は汗をかいてふと視線が外れると青い顔して唇を噛んだ バスルームはユウの嫌いな場所 ここにいる時ユウは泣いてばかりいる 本当は嫌なくせに、怖いくせに、俺の理不尽な怒りを受け止めようと無理をする 泣かせたくはないのに...なかったはずなのに強張る体をもっと縮めて泣きじゃくるからもっと余計に手を上げてしまう 優しくするのは難しい 俺は先生みたいにはできない....してあげたくてもできない 心の中で正反対な自分がいて優しくしてあげたい自分と傷つけて泣かせたい自分 真逆の気持ちがグラグラと俺を惑わせる 小さなユウの体に俺の跡が無数に残って痛々しくて...だけど俺だけのものな気がしてうれしくて 「早く良くなりますように」なんてキスをした 嬉しそうにしたユウがすごくかわいくて...かわいくてかわいくてたまらない なんで笑うんだろうって...そもそも痣を付けたのは俺なのに 怖くないの？嫌じゃないの？ それを言えなくさせたのも俺なんだけど なんてバカなんだろうなんて思ってまた噛みつきたくなってしまう ほんの気まぐれで遊んでやったら何度も浮かぶしゃぼん玉を目で追いかけて手を叩いて喜んだ しつこいくらいに強請られたけどこんな簡単なことなら何百回でも、何千回でもやってあげてもいいよ もっと早くこうしてやれば良かったんだ 顔を赤くしてのぼせてしまいそうなユウに「もう終わり」と告げるとひどく悲しそうな顔をした 「もう終わり」とか「それはダメ」とかそういうのは分かるんだよね あぁ...そっか　　 俺が言いすぎてるからか 一度で理解するように体に覚えさせてきたからなんだな こんなことぐらいで泣くなよと思いながら目尻にたまった涙を梳くって笑顔を作る 「また明日やってあげる」 ユウの小さな小指に自分の指を絡めて”約束”をした 明日ってわかる？ 約束ってわかる？ だけど明日はこんな風にできるんだろうか 明日はできて明後日できなかったらどうしよう それが怖くて今にも傷つけてしまいそうな俺はどうしたらいいんだろう 誰か助けて ユウ...助けてよ