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知らない世界

「おはよう、ユウくん」 椎名が声をかけるとユウは彼の胸に眠そうな顔をもたれるようにしながら目だけをこちらに向けた 「おはようでしょ?ユウ」 「ん...ぅ」 ”おはよう”は起きたら彼がいつもいう言葉 「はい、座って?ユウ……降りないの?」 降ろそうとイスを引いたのにユウは首に巻きつけた腕の力を強くさせた 降りたくないと体で訴える だってこんな事は初めてだったから 朝から抱っこしてもらえて、無条件に優しくしてもらえる事なんてなかった あったとすれば怪我がひどくて歩けなくなった時ぐらいだ 彼の胸に顔を擦りつけてユウはイヤイヤと顔を横にふる 「ユウくん...降りないの?座ってごはんたべよう?」 椎名が促してみてもユウはそっぽを向いて聞こえないふりをしているみたいだった 「もぉ...しょうがないなぁ...赤ちゃんみたい」 彼はあきれるように笑って本当に子どものように頭を撫でてからイスに座る 今日の朝食は昨日大量に買い込んだものの残り ユウは差し出されてものをどれも美味しそうに食べてコップに注がれたオレンジジュースはすぐに飲み干してしまった 「よく食べるね、美味しい?ユウくん」 笑いながら話しかける椎名の顔をまじまじと見つめる すると彼がそれに向かって何か言った ユウには理解できない言葉だった けれど二人の声は柔らかくてたまに笑ったりしていてユウは目をゴシゴシ擦って2人を見比べる 「どうしたの?」 しきりに何度もゴシゴシ擦っていると2人が不思議そうにユウの顔を覗き込んだ 「目が痛い?」 「まだ眠いんじゃない?」 そういいながら二人はユウの前で笑い合う それを見てまた無意識にゴシゴシと目を擦ってしまう 不思議だった 二人が仲良しでニコニコしてたから まだ夢が覚めてないのかなぁ...なんて思って何度も擦ったけどそれは変わらなかった

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