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大事な名前
「みっ...いぃ、、、はぁっ!」
顔を真っ赤にしながら口を真横に広げるユウ
クスクス笑いながら椎名は繰り返し呼びかけた
「みつるくんだよ。み、つ、るくん」
教えたつもりもなかったのに自分の事を言われて椎名は舞い上がり今までのことが無駄でなかったことに安堵した
自分の名前が呼ばれたことはなにも特別なことではない
ただ単にそのフレーズをよく耳にしたからだと気付いた時、もっとミツルの名前を身近にしないと覚えられないんだなと思った
2人の時は会話が一方的で口数の少ない彼の言葉を覚えることは難しかったであろう
自分が来たことによって頻繁に交わされる会話はユウの話したいという本能を刺激してまるでスポンジのように吸収しようとしている
よく聞いてるんだなと思った
一生懸命にミツルの名前を言いたがっているユウの姿を見ているとなんとかしてあげたいと強く思う
ユウがどれだけミツルを想っているかを伝えてあげたい
そしてミツルも最近あからさまに態度がちがうことが良い方に向いていると思う
彼もまた必死なのだ
優しくしようと努力をしている
それが分かるからどうにかして2人が一緒に居られるようにしてあげたいと思ってしまう
「みぃ...」
何度も何度も繰り返してユウはミツルの名前を言おうとする
「ゆっくりでいいんだよ?また明日やろう」
飽きる事なく繰り返すユウに椎名は言った
「疲れちゃったでしょ?」
「...ぅ?」
席を立とうとするとユウは椎名の手をグッと握ってまた口を開ける
「み...」
「わかった、わかった、付き合うよ。」
そう言うとユウはホッとしたように笑った
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