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約束

指切りで許されるはずもない 分かっているから"約束"することに躊躇してしまう ほら早く...と椎名に促されてしまったミツルは小さな声でユウに言った 「ユウ、今まで痛い事とか怖い事とかいっぱい無理させてごめんね」 言いたい事や謝らなければいけないことがありすぎて言葉が見つからない 「えっと...」 目を伏せて次の言葉を探しながら唇を噛んだ ユウの無防備な瞳はその都度,ミツルの動きに合わせて揺れていく 「ユウの事、大事にするから...約束するよ」 目を細めて見上げるとユウは呆けたような顔でただミツルを見つめていた 理解できたかは分からない けれど確かに伝わった気がした 「よかったねぇ、ユウくん」 椎名はユウの頭を撫でながら同じようにしゃがんで三人とも目線が同じになった 「これからはずっと優しいみつるくんだよ」 「....?」 するとミツルは少し照れくさそうにしながらさっと立ち上がり仕切り直した 「ケーキ食べよっか、俺なんか適当に作るから」 そそくさとキッチンへ逃げるように行ってしまう 椎名はユウにそっと話しかけた 全部は到底理解できなかったようでユウはずっと首をかしげたり、さっきまでつないでいた小指を眺めたりしている 「よかったね、ユウくん、もう大丈夫だよ」 彼は変わろうとしている 自らユウにそれを誓い二人で立て直そうとしている 椎名はそれが嬉しくて声をかけずにはいられなかった

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