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その部屋は「最悪」そのものだった 足の踏み場もないほどのゴミの山 1kの部屋はさっきまで大人の男女がいたとは思えないほどの狭さだった つーかすっげぇ匂い 腐ったような鼻が曲がりそうな匂い 同じ間取り、薄い壁の向こうには自分の部屋とは全く違う空間があったのかと思うと正直、愕然とした 土足のまま一歩家の中に入ってみるとすぐに目に飛び込んだのは壁に飛んだ大量の血の跡 そこは俺が寝る時に頭を向けてる壁の真裏 あの衝撃音はきっとアキラが押し付けられたのか投げ飛ばされたのか... あいつはこんなゴミの中で1人でいつもいたんだな 帰ってこないママを待ち続けて、やっと帰って来たと思ったらこんな目に遭って あいつは一体なんだったんだろう... 部屋をぐるりと見渡して俺は一歩足を引いた あんまり長くいてもヤバいしな 結局この部屋に入ったからと言って何が分かったわけでもない アキラがいなかった、それだけだ 自嘲しながら部屋を出ようと回れ右をした時 ふとゴミに塞がれた押入れが気になった 何となく...理由なんかなかった ただそれと同時にアキラが言っていたポチの話を急に思い出した 俺は土足のままそこに近づいて積まれたゴミを退けて押入れを開けた その中にも外と同じようにゴミが沢山詰まっていて俺はそれを掻き分けて押し入れの奥にまで手を伸ばす 何をやっているんだろう いるわけない バカみたいだと思いながら何故か俺の手は止まらない 手探りで奥の暗闇に腕を突っ込むと段ボールのようなものに触れた 俺はそれを掴んで無理やり押入れから引きずり出した それは引越しの時に渡されるような大きいサイズの段ボール 中身は思ったより重かった ありえない そんなわけない だけど、もしも...そんな思いが交差して勝手に手元が震えだす 俺はそのボロボロになって折り重なった段ボールのふたを開けて息を飲んだ 「まじかよ」 そこにはアキラより一回り小さいガキが膝を丸めてスッポリと収まっていた 乾いた喉が無理やり唾液を飲み込んだ音がする 「お前がポチ?」 そう言うとそれは虚ろな目でゆっくりと一度瞬きをした

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