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「拾ってやったんだからなんとか言えよ!!」
言い聞かせてから1週間ほどたって俺はしびれを切らし、ユウの腕を掴んで玄関まで引きずっていた
勢いあまって膝が擦りむいてしまってもユウは相変わらず無表情のままだった
怒鳴ろうが何をしようが全く動じない
あまりにも動かないからユウの頬っぺたを強く抓ってみても泣くどころか目も合わさなかった
だけど時々言い間違えてポチといった時、ほんの少しピクリと体を反応させる
前の飼い主の名残が残っている気がしてそれが異様に俺をイライラさせた
「もーいーや!つまんねーし」
大きくため息をついて掴んでいた腕を放り投げる
せっかく名前も付けたのに懐くどころか俺の調子を狂わせる
こんなの拾うんじゃなかった
期待をして損をした
ユウを連れてきてからたったの一週間で俺はもう日中話しかけることもなくなってしまった
話しかけなくなると、とたんにどうでも良くなって、そう思い始めると、もはや気にかけることすらなくなってしまった
ポチを飼い始めて...いや、ちがう
置物を部屋に置きっぱなしにしてから1ヶ月、2ヶ月とどれだけ一緒にいる時間が増えようとポチに変化は全くなかった
ある夜にいつものようにバイトに行くと、この間犬を飼い始めた女の子と同じシフトだった
あの子が飼っている子犬はどんな風に変化したのだろう
なんとなく気になって少し空いた時間に俺は声をかけた
「犬どうなった?懐いてる?」
その子は普段話しかけない俺が声をかけてきたことにちょっと驚いてからすぐに顔を崩すように笑った
「まだ名前を呼んだら来るぐらいだけど...結構懐いてきたと思うよ」
嬉しそうに自分の犬の話をするその子を見ながらなんだか胸が沈んでいく
子犬だって名前を呼ばれたら来るのになんでアイツはああなんだろう
なんだか全然楽しくない、めんどくさくなってきた
もう要らないや
もともと要らないやつなんだしどっかに捨ててしまいたい
俺には所詮無理だったんだ
ペットなんて全然かわいくない
これから先もあんな置物みたいなやつをかわいいなんて思えるわけがない
もう嫌だ
捨てたい捨てたい
家に帰るとあの置物みたいな奴が待ってるかと思うとうんざりする
あいつがどーなろうと知ったこっちゃない
俺はその日初めてユウを放ったまま家に帰らなかった
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