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最初は目が合うだけで良かった...
だけど目が合うようになると今度は呼んだら振り向いてほしくて、振り向いてくれたら今度は走って俺の傍まで来てほしくなった
「ぅ...あ...」
「怖くないって、ほら、こっちだよ」
俺は壁にもたれて手を叩く
ほんの少し離れた場所からユウはテトテトとふらつきながら俺に両手を伸ばしてくる
「ほら...もうちょっと、ここまでおいで?」
あと一歩のところでガクンと膝が落ちてそのまま俺の胸に倒れ込んでくるのを俺は両手で抱きとめる
「あはは、すごいじゃん、歩けたね、ユウ」
クシャッとユウの前髪を指に絡ませて大げさに喜んでやると胸元でユウが不思議そうに俺を見上げる
「いい子だね、偉いね」
そう言って頬に触れたときユウは大きな目を細めてその顔をへにゃっとさせた
「あっ...今笑った?」
初めて見るユウの笑顔は想像していたものをはるかに超えるぐらい可愛くて迷っていた気持ちに決定打を放った
ここを引っ越そう
ユウが大きな声で笑ったり泣いたり走り回ったりできる広い部屋
そこで二人っきりでずっと暮らしていく
きっと楽しいだろうな
ユウの声は綺麗だから毎日聴きたくなるだろう
顔はすごくかわいいからずっと見つめていたくなって、滑らかな肌はずっと触れていたくなるだろう
「俺はユウのために生きるからユウも俺のために生きてよ」
俺は胸元に顔をうずめるユウを強く抱きしめてつぶやいた
ユウを守ってあげたかった
1人になんてさせたくなかった
それなのにアキラが命がけで守ったはずのユウの身体には次第に俺の跡が残るようになった
今の俺を見てアキラはなんていうのだろう...
”ユウのために”と俺が用意したのは頑丈な鍵のついた段ボール箱よりも大きな箱
むしろ前よりも残酷なその中に俺はユウを閉じ込めた
なにが間違っていたんだろう
拾った事?閉じ込めたこと?
アキラを助けなかったこと?
ちがう...
きっと今まで選択した全てが間違いだったんだ
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