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二人きりーユウー

わんわんわん ぬいぐるみからいつもと違う声がする それは大好きな彼の声 せんせぇはおでかけしたの おでかけは....うん.....しっるよ おでかけは1人ぼっちにされるから 玄関のあの扉は大好きな人を連れて行く 嫌い嫌い...大っ嫌い あっちには何があるのかな...彼はいつもおでかけしたくないって言うのに行ってしまう それなら行かないでほしいのに ずっと一緒にいてほしいのに 一回だけあっちに行ったのを覚えてる 突然、彼に扉の向こうに放り投げられた 大事な首輪も取り上げられて、怖くてずっと座ってたから何があるとかよく見てなかった だからもう二度とあっちには行きたくない あそこは怖くて嫌なところ 今も時々首輪を触って確かめる 金具に指をひっかけて揺らしてみるとそれがこすれてカチカチと音がする その音は彼と繋がっている証 聞けば聞くほどもっと彼を好きになる せんせぇのおでかけはいつまでかなぁ 言われたはずなのに分からない でもせんせぇはおでかけするまえに言ってくれた 「また”ミツルくん”の練習をしようね」 せんせぇはいっぱい教えてくれる優しい人 だけどせんせぇはいつも彼とお話をするときとっても難しい言葉を使う 難しくて分かんなくて...その時の彼はユウを見てくれなくなってしまう それが少し寂しくてほんの少し嫌だった せんせぇのおでかけが終わるまで彼はずっとユウと一緒 彼の全部をひとり占め 名前を呼んでくれる声も見てくれる瞳も触ってくれる指先も 全部全部ユウのもの

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