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「行っちゃった...」 椎名が走り去っていったドアをマナトは眺めていた バカみたい....コーラ買いにわざわざ走って行くなんて... 別に本当に飲みたかったわけじゃない 人の心を見透かすようなあの目にこれ以上見つめられたくなかった 丸裸にされそうで、考えていることがすべて見破られているようで怖い だから医者は嫌いだ だからほんの少し困らせてやりたかっただけだ いけない...いけない...あの人に気に入ってもらわないと今日は寝るところがないんだから 椎名がいなくなった部屋でマナトは乱された心を落ち着かせようと深呼吸する すると静まり返った部屋で小さな物音がした 「.....?」 きょろきょろと見渡してみたけれど部屋には自分以外は見当たらない 気のせいか...と首をひねってみたけれどしばらくするとやっぱり何か人の気配がする マナトは立ち上がり部屋を物色するように歩き回った 何の変哲もないただの部屋 奥のベットに誰か寝てるかと思ったけれどそれもいない 「あ...」 マナトはパーテーションで区切られた奥にもう一つ扉があるのを見つけた 先ほど椎名は飲み物があるといっていたから、ここは給湯室か...もしくは控室かもしれない 「........」 マナトは扉に耳を近づけて息を止めた やっぱりこの中に誰かいるみたいだ...... 別に誰かいようが不思議ではないがこれから自分が椎名に対して行おうとすることはあまり褒められたことではない どうせなら完全に二人っきりを願いたかった マナトはそっと扉を開けて細い隙間から中を覗こうと目を凝らした

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