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、
「....くそ」
マナトは部屋に置かれたベットに寝転がって口を尖らせていた
なんなんだよ、あの態度...
みんなでいる時と全然違う、特にあの”ユウ”との接し方の違いには差がありすぎる
自分は初対面なのだから仕方がないのかもしれないが、それでも椎名とユウがいれば涼介はこんな自分にも気を使ってくれている気がした
だから不覚にも....うれしいと思ってしまったのだ
世の中にはこんな大人がいたのだと....
「裏表ありすぎんだろっ」
”ユウのことバカにすんな”
涼介の低くどすの聞いた声が耳にこだまして残っている
あんな何もできない、バカみたいなやつと自分はいったい何が違うというのだろう
大人二人に何から何までしてもらって大事にしてもらえるのはなぜ?
そしてマナトは思う
なぜあんな奴にも誰かいて、自分には誰もいないのだろう......と
マナトは沈み込んでいく気持ちを振り払うように起き上がるとそのままの勢いで立ち上がった
自分にあてがわれたゲストルームはホテル並みの豪華仕様にイマイチゆっくりとくつろげない
涼介はあの大きな会社の社長で自分が今まで出会った中で一番いい物件だ
あの人が手に入れば今までのみじめな自分とはおさらばできるのではないか...
あの人が自分を見てくれたら、こんな部屋も使いたい放題で、寝るところも食べることももう困らなくなるんじゃないか
あの人が....
マナトはそのまま足を忍ばせるように静かに部屋を出て行った
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