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近くて遠い距離

「せんせっ...せんせぇっ」 朝の支度をする椎名の周りをユウはグルグルと回っては見上げている 「もうっ...いくのっ?いつ...いくのっ?」 椎名はそれを問われるたびに同じ返事を繰り返している 「まだぁ、朝ご飯を食べて、歯を磨いたら」 「ごはんっ、たべたら...はっ、みがいたら...いくのっ!?」 「ユウくん、顔を洗って支度しないとごはんにならないよ?」 「した!お顔...したよっ、おでかけできるっ!!」 今日は日曜日 ユウが椎名をせかす理由は一つだけ 今日は待ちに待った大好きな人に会えるから テーブルに置かれた卓上カレンダーには週末に○が付いている ユウは毎日、毎日その日まで日付に×を付けていくのを日課にしているのだ 椎名の元で暮らすようになって三年.....ミツルとは未だに一緒に暮らせるようにはなっていない 離れてから1年近くはまずユウを社会に適応させることに専念して、それから少しずつ二人を再会させるように椎名は計画を立てた 初めは椎名も含めての面会で時間も決めて、その時間を少しづつ長くしていく こうして徐々に二人の時間を増やしていずれまた一緒に生活できるようにしようと考えたからだった あれから三年 今のユウとミツルは週末には毎週会うことができるようになり、月末にはユウはミツルの家に泊まることも許されるようになった ユウの努力とミツルの精神の安定は椎名が驚くほどこの三年で変化を見せ、そのことだけでも絆の深さを感じざる負えなかった まだまだ元に戻るのは時間がかかるがもう少しそれを増やしてもいいのではないかと思い始めているところだった 「せんせっ...もういく?」 「まだだってば...ほら、ご飯食べるよっ!」 はやくはやくとせかすユウに根負けした椎名は急いで食事の支度を済ませた

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