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ユウの周りには椎名達といった大人ばかりで、”友達”と呼べるものはいない 行動範囲も限られた中で年の近い相手と出会う機会はほとんどなく、たとえあったとしても知識の乏しいユウと仲良くできるかは別の話だ 椎名としては、できるだけ人並みの生活を学ばせて、たくさんのことを経験させてあげたかった 「君とユウくんならいい友達になれると思うんだ」 それを聞いたマナトは怪訝そうな顔で椎名を見つめる 「なんで...俺っ...」 そう言いかけたマナトはたと止まり、考え込んだ 椎名の言う「友達の定義」は分からないがそれは自分に降って湧いたチャンスなのではないだろうか 椎名の言う通りにすることで得られる”自分がここにいてもいい理由” 暖かい食事に、柔らかいベット 気にかけてもらえる大人の手 それはマナトにとって喉から手が出るほど欲しい"存在価値" 「友達ってなにすんの?」 「普通にしてくれればいいよ、だって2人、似てるもん」 「はっ?!あんな...」 似てると言われてマナトは思わず開きかけた口を慌ててつぐんで言葉を飲み込んだ ーーあんなバカと似てるなんて冗談じゃねぇよっ!! 不満げな顔で椎名を見上げるとそんなことなどお構いなしに呑気な笑顔を向けてくる ーーこの人って怒る事ないのかな いつもいつもニコニコ笑って、いつも誰かの事を考えて世話を焼いている 見ず知らずの自分もそうやって心配してくれた 「お願いできる?」 今もまたそうやってユウのことを考えてこんな自分にも簡単に頭を下げる ユウはいつもこうやってまるで砂糖菓子みたいに甘く、優しい人たちに囲まれてのほほんと暮らしている なんにもできなくてもただそこにいるだけで喜ばれて、可愛がられて、守られている ーーいいよな...あいつだけ マナトは胸に広がる靄を気づかれないように小さく頷いた

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