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見えない鎖

ーーあれはユウとミツルが離れてから1年 桜が咲いた春のある日 ミツルとユウはようやく会うことが許された 長かったような短かったような...ミツルとしてはもう一生会えないような気さえしていたからそれは思いがけない朗報だった 離れて一切連絡を取ることもできず、椎名からの近況報告でしかユウの現状を知ることができなかったこの時期 それでもミツルの頭の中はユウのことばかりで時間がたてばたつほどその想いは重く膨らんでいった それなのに....”やっと会える” そう思った途端に湧き上がってくる複雑な気持ちがあった 会いたいはずなのに、会いたくない ーー会うのが怖いのだ ユウは自分を覚えているだろうか 怖がったりしないだろうか、自分を憎んではいないだろうか 先生のそばにいることで安全で幸せな日々を送るユウにとってこの再会は果たして必要なものなのだろうか きっともう知っているはずなのだから とても生活とは呼べないあの部屋での暮らしを 殴られ征服されながらそれでも縋ってきた相手がどんな人間だったのかを 自分がその相手からどんな扱いを受けていたのかを そうして再会の当日までミツルは浮かんでは消える複雑な思いを胸に抱いたまま眠れぬ夜を過ごした 再会の場所は涼介のオフィス 椎名の医務室の前でミツルは最後の一歩を踏み出すことが出来ずに足が震えて動けなかった ーーこの扉の向こうにユウがいる 最初はなんて言おうか 今までごめん 久しぶり 元気にしてた? 会いたかった 俺の事覚えてる? ねぇ、ユウ ねぇ...まだ俺の事好き? もっとマシな言葉はないのだろうか...たくさんの言葉が頭の中をぐるぐる回って気分が悪くなりそうだ 「ほら、ミツルくん」 気づけば立ち竦んだ自分の背中を椎名が押すように手を添えていた 「ユウくん、待ってるよ」 汗ばんだ手に椎名の手が重なり、その扉はゆっくりと開いていった

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