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清潔感に溢れたその部屋は全面ガラス張りの窓からありったけの日差しが注いでいた
一瞬目が眩むような光の中でミツルは思った
この部屋はユウのために用意された部屋なのだとーー
窓から見える青空は手を伸ばしたら届きそうなくらい、近くて大きくて、きっとユウはこの景色を毎日飽きもせず、ずっと眺めているのだろう
だってユウはあの部屋でたった1人、小さな窓から空を眺めることしかできなかったからーー
「ユウくん、お待たせ」
先に部屋に入った椎名に連れられて、ミツルはその部屋に足を踏み入れた
目の前には待ち焦がれていた相手
"愛しい"を形にした姿がそこにはあった
"ああ、ユウだ"
懐かしい姿はそのままで、けれど1年越しのユウは少し身長が伸びていた
真っ白な肌に大きな瞳、さらさらの髪の毛
どれもこれも夢に見たユウそのものだった
「2人とも固まっちゃってる、大丈夫?」
椎名の声にハッとしてミツルはやっと口を開くことができた
「ユウ」
頭の中で何度となく呼び続けた名前を口にするのは一年ぶりだった
目の前に佇んだユウは無言のままミツルをまじまじと見上げて大きな瞳をパチクリとしている
ほんの少し不安げな瞳は相変わらずで、ミツルはそれに吸い込まれるように手を伸ばしそっと頬に触れた
指先から伝わる温度はこれが夢ではないことを証明してくれた
会いたかった
触れたかった
ずっとずっと...気が狂いそうなほどに
「ユウ、いい子にしてた?」
「みぃくん...」
懐かしいあの声で、あの呼び名で呼ばれた瞬間、ミツルはユウを力任せに腕の中に閉じ込めた
一年前から失った色がようやくすべて戻ってきたような気がした
ミツルは自分がどれだけ会いたくて、どれだけ愛しくて、どれだけ待ち望んでいたかを思い知ったのだ
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