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ーー2人の車を見送ってからもミツルはしばらくそこに佇んでいた
どれだけ見つめてもユウが戻ってくるわけでもない
仕方なくミツルは駐車場を後にした
部屋に戻るとそこには真っ暗な空間が広がっている
さっきまでユウがいて、明るい笑い声が響いていたなんて嘘のようだ
1人になると途端に何もかもやる気が失せてしまう
ユウがいるからこそ食事も掃除もなにもかもに意味があるのだ
ふと机の上に目をやるとユウの書いたミツルの似顔絵が一枚置いてあった
手にとってまじまじと見つめてさっきまでのユウの姿を思い浮かべた
決して上手くはないが一生懸命書いたその絵をミツルが褒めてやるとユウはすごく喜んで目を輝かせた
「みぃくんにあげるっ!!」
そう言って嬉しそうにここに置いていったのだ
なにもできなかったユウが少しずつ変わっていく
会うたびに話す言葉が多くなり、出来ることが増えていく
それは素晴らしい事なのになぜ、素直に喜べないのだろう
ーーそれは分かっているからだ
曇っていく気持ちも、あの日ユウが望むことを言ってあげられなかった理由も
どうせ自分にはユウを迎えにいく事は出来ない
出来るわけがないのだ
だって自分はあの頃からなに一つ変わっていないのだから
そしてミツルは手にとったユウの絵をもう一度見つめ直すと、グシャッと丸めてゴミ箱に投げ捨てた
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