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椎名に昼食を誘われた涼介と千春は泣きじゃくるユウと、仏頂面のマナト、そして腕が取れかけたぬいぐるみを目の当たりにした 「ちぃちゃんっ...いたくっ、しないで?」 「ふふっ、大丈夫よぉ、すぐに治してあげるからね」 千春はすぐに自前のソーイングセットを取り出し、縫い付せてくれた ユウは不安げなまなざしでチクチクと針が刺さるのを見つめている 「おい、マナト!お前はユウに謝れ」 眉間に皺を寄せた涼介がマナトの首根っこを掴んでユウの前に引きづり出した 「なんでっ俺が...」 涼介に反論するものの、破れたぬいぐるみと泣き顔のユウが並ぶと誰が見てもマナトに非があるのは明白だ なんだかそこにいる大人全員が冷たく冷ややかな目をして自分を見ているような気がして、マナトはいたたまれなくなった 「なんだよっ!!遊んでやろうとしただけなのにっ!!」 吐き捨てるように叫ぶとマナトは涼介の手から逃れるようにして部屋を飛び出していった 「こらっ!マナトッ!!ーーったく、どうしようもねぇな、あいつは」 涼介は呆れながらため息をはいて、それからグリグリとユウの頭を撫でた 「かわいそうに....新しいぬいぐるみ買ってやるから」 「こらこら、甘やかさないで、それでなくても涼介の買ったぬいぐるみはユウくんのベット占領してるんだから」 椎名はユウの枕元に置いてある大量のぬいぐるみを思い浮かべて首を横に振る そうしているうちに「よし、これで大丈夫」と千春が顔を上げていった ぬいぐるみは破れたところが一見すると分からないくらい丁寧に補修してある それを渡されたユウは目を輝かせて喜んだ 「わぁぁっ!!ちぃちゃんっ!!ありがとっ」 その柔らかな微笑みにそこにいる大人全員がほっこりと胸を和ませた 「良かったね、ユウくん」 ユウのこんな笑顔を見るたびに椎名はふと思う 自分はこの笑顔を守りたくてこうして一緒に生活をしているのだと こんな風に笑って、たくさんのことを学んでいく姿は椎名自身にも勇気と自信を与えてくれる ユウといると大人になって忘れていたような小さな事に喜ぶ気持ちや純粋な心が蘇ってくるようだった だからこそ、どんなことがあろうとこれから先ユウを傷つけるものがあれば全身全霊で守ってやろうと誓ったのだ たとえそれが誰であろうともーーー

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