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マナトは目の前の懐かしい仲間たちとの再会に胸を躍らせていた その中でも1人だけ、少し雰囲気のある青年の”樹”には絶対的な信頼を寄せていた 年齢はマナトより少し上の20歳 けれど、他の2人と違ってバカ騒ぎするわけでもなくそれがマナトにとっては憧れてしまうほど、大人に見えた マナトは幼いころから愛情に乏しく、14歳の時に家出をした けれど未成年の彼が一人で生活するのに稼げるだけの能力はなく、途方に暮れていた時に街角で声をかけてくれたのが樹だった 樹はまだ幼くあどけないマナトに身一つで稼げる方法を教えてくれた けして褒めらたことではないけれど、誰も頼れなかったマナトには救世主だった それがいわゆる売春であると分かっていてもそれ以外に生きていく方法は見つからなかったし、樹がマナトに上客を斡旋してくれたおかげで今までこれといったトラブルに巻き込まれたことはない このクラブを紹介してくれたのも、元カレを引き合わせてくれたのも樹だ ここも樹の知り合いが経営しているらしく、顔を売っておけばマナトのような未成年でも出入りも自由で酒まで出してくれる まさに樹さまさまだった 「マナト、最近付き合い悪いからさー...もう来ないかと思った」 「そんな事ないって、ちょっと忙しかっただけ」 「本当かよ?俺らから抜けるつもりなんじゃねえの?」 横の2人が口々に不満を漏らし始めるとそれを制するかのように樹が口を挟んだ 「よせって、マナトが俺らを裏切るわけないじゃん」 なぁ?と目配せされるとマナトはホッとしたように首を縦にふった 「そうだよっ!!ねっ!樹さん、今日はいっぱい飲もうっ!!」 マナトはその日、仲間というより悪友の3人とくだらない話に花を咲かせて夜更けまで飲み明かしたのだった

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