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ほんの少しの出来心
「あぁぁー!!マナ....くんっ、みっけぇっ!!」
今日もユウは相変わらずのニッコリ笑顔でマナトを迎え入れた
ーーぬいぐるみの一件以来、ここに来るのもためらっていたが、このままでは涼介の家まで出入りができなくなるような気がしてマナトはしぶしぶフィスへと足を向けた
勝手な言い分ではあるが、涼介というハイスペックな物件をみすみす手放したくはない
だからといって二人の間に何かあるわけではないのだけれど....
初めて泊まった日、思いっきり拒否をされたマナトはそれでも虎視眈々と機会を伺っていた
チャンスさえあれば、その事実さえあればどうとでもなる!!そう意気込んでいたのに、当の涼介はあろうことかほとんど自宅に帰ってこないのだ
勝手に使っていいといわれたから厚かましくもずっとそこに泊まりこんでみたものの、マナトが寝ている間に何やら着替えだけ取りに来て、そのまますぐに出かけてしまうらしい
社長ってそんなに忙しいのか?それとも、どこかにセカンドハウスでもあるのかな?
家で顔を合わせられないならオフィスしかないけれど、ユウを泣かせて以来、どうにも気まずくて行きづらい
けれどものは考えようで、謝りさえすればまた出入りが自由になるかもしれない
そしたら涼介にも会えるし、またチャンスがめぐってくるかもしれないと考えた
そしてマナトはまたユウに会いに行くことにしたのだ
子供みたいでバカにしたけど、すごい大事そうにしていたぬいぐるみだ
さすがに怒っているかなぁ...
しかし「会いたくない」とか「許せない」とか言われるのを覚悟して向かった先でマナトが目にしたのは自分を歓迎するユウの姿だった
「マナくんっ!!いっしょに...あそぼぉっ!!」
たどたどしくも嬉しそうに走り寄ってくるのを見てホッとしたのと同時に拍子抜けしてしまった
怒ってないの?それとも....と裏があるんじゃないかと訝しんでいたマナトだったがそのうち気づくようになった
ユウには”意地悪された”という概念がないということ
だからあの一件もなかったことのようにふるまえるし、あとからマナトに文句を言うこともない
ある時は絵本を汚したり、ノートに落書きしたりするとその時はべそをかいて、大騒ぎするくせに次の日にはケロッと何もなかったようにマナトを迎え入れるのだ
相変わらず馬鹿な奴....なんて思いながらも本心ではユウの性格が穏やかなことにマナトもホッとしていた
ユウが自分を嫌だといえばきっと、涼介も椎名先生も全力でここから自分を排除するだろう
こうしてユウが許してくれたおかげでマナトはまた元通りに遊びに行くことができるようになった
オフィスに行けば必然的に涼介に会う回数も増える
まだまだ、これからだっ!!とマナトは密かに息巻いていた
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