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「やー、本当、マナトくんが来てくれるおかげで助かっちゃうなぁ、ユウくんも楽しそうだし」
相変わらず能天気な椎名がマナトの影の企みなど知らずに笑っている
「別に、暇だし...ねぇ、涼介は?」
「今、会議中かなぁ...なんか急ぎの用事?」
「そうじゃないけど...全然会わないから」
まるで不貞腐れたように話すマナトに椎名は色付いた目を向ける
「会いたい?」
「ばっ....かじゃないのっ!?部屋、借りっ放しなのにいいのかなって思っただけだしっ!!」
真っ赤になって強く否定するマナトを椎名はニヤニヤしながら見つめてくる
「本当だってばっ!!」
「はいはい、分かりました。でも、お昼は涼介も誘ってみようか」
「いいってばっ!!」
余計なお世話だと言わんばかりにマナトはユウの方へと話題を無理やりうつした
「今日はなんかえらく機嫌いいな、ユウ」
「う?」
いつもと変わらず意味不明な絵を書き込まれたノートだが、今日はいつになくカラフルに彩られている
「なんかいい事あったの?」
「う...うんっ...えっとえっと...」
「明日はミツルくんちにお泊まりなんだよね?」
マナトの質問にすぐに答えられないユウの代わりに椎名が答える
ね?という椎名の目線にユウは堰をきったように話しだした
「うんっ...うんっ....あのねっ、あした...みぃくんといっしょなのっ」
いつになく浮かれる理由は月に一度の宿泊の日
言葉通り明日はミツルとずっと一緒なのだ
時間も気にせず誰にも遠慮せずに朝まで二人っきりで過ごすのだ
「ふーん...良かったな」
まるっきり興味なさそうに答えるマナトにうれしそうな顔を見せている
「さぁて、これを涼介に持って行ったらお昼にしようかっ、マナトくんも食べていくでしょ?」
ドンッ!!束になった書類を合わせると椎名は立ち上がった
「よっしゃっ!!」
実はマナトが昼前にここに来る理由の一つにこれがあった
ここに来ると決まって椎名は昼食に誘ってくれるのだ
社食や弁当、近くの喫茶店、いろいろな食事をごちそうしてくれるのは金もないマナトにとってとてもありがたい
そして何より1人きりで食事をしなくてもすむ
「マナくんとっ...ごはんだっ!!」
ちょっと1匹うるさい奴のおまけ付きだけど...
「さて、涼介も誘ってこなくちゃ」
「それはいいんだってばっ!」
マナトは部屋を後にする椎名に向かって叫んでいた
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