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「ユウくんのお届けでーす」 「...ご苦労様です」 椎名の冗談にミツルはクスリともせず出迎えた 愛想がないのは相変わらずだ それでもなんとなく雰囲気が柔らかく感じるのは彼もユウと同じ気持ちだからだろう 「じゃあ明日迎えにくるからね!2人とも仲良くするんだよ」 椎名はユウをミツルに引き渡すと手を振って帰っていった ーー今から明日の迎えが来るまでユウとミツルの二人っきりの時間が始まるのだ 「みぃくんっ、ただいまっ」 「わかった、わかった、部屋に入ろう?」 軽くあしらうようにしてリビングに戻るミツルの後をユウはパタパタと追いかけていく 「今日は何する?ユウは何がしたい?」 「あぅ?えっと...えっと....」 「ペンギンのアニメ借りてきてあるよ、見たい?」 ユウの目が色づくとミツルは優しそうな目を向けて頭をヨシヨシと撫でた 「オレンジジュース入れてくるから座って待ってて、プリンも買ってあるから」 ミツルはユウをソファに促すとキッチンへと向かっていった ユウはキッチンに向かうミツルを目で追いながら考える ”ユウは何がしたい?” ペンギンのアニメにオレンジジュース 優しい言葉と自分の好きなことをしようとしてくれる彼の態度 みぃくんはなんでもしてくれる お泊りの日は、いつもプリンがあるの ごはんもいっしょ おふろもいっしょ 寝るときもいっしょ ずーっとずーっといっしょ それはとても幸せなことだけど時々ちょっと不安になる いいのかな.... こんなにうれしくなってもいいのかな.... だって自分はみぃくんになにもしてないのに 「ユウ、どうかした?」 ぼんやりしたユウにミツルが声をかけるとハッとしたように勢いよく顔を上げる 「おいで?ペンギン見るんでしょ?」 「あっ....う...うんっ」 気が付くとミツルが床に座りこんで手を差し伸べてくれていた ユウは導かれるようにその手をとってミツルの首に腕を回した

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