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「...ひっく..うぅ....」 離されて自由になった身体を守るように抱きしめると小刻みに震えていた 一体どうしたというのだろう さっきまであんなに優しかったのに あんなにたのしかったのに 「ユウ」 呼ばれる声にビクリと大げさなぐらい跳ねてからユウはミツルを見上げた 影のかかる顔は笑っているのか怒っているのかわからない 「先生に迎えに来てもらうから」 それだけ言うとミツルは脱衣所を出て行ってしまう せんせぇ...? なんで...? 状況を把握できないまま、ユウはヨロヨロと立ち上がり、ミツルの後を追いかけた ふらつく足が邪魔して、うまく歩けない リビングに戻ると、ミツルは携帯を片手に誰かと話している そっと近づくと、そこから聞こえるミツルの言葉にユウの心臓がドクンと脈打った 「先生、ユウの事、連れて帰ってよ」 "ユウの事連れて帰って" 今日はずっとずっと、一緒にいる日なのに 明日にならないと、せんせぇのお迎えはこないのに 「やぁだぁああああっ!!」 ミツルの言葉を聞いたユウは激しく動揺し、泣き叫んだ なんで? なんで? とにかくミツルの腕にしがみ付き、どうにかしようと無我夢中で縋る ミツルはそんなユウを振り払い、思い切り突き飛ばした 勢いよく吹っ飛んだユウの身体は激しく床に叩きつけられる 「ぃ...」 「汚い手で俺に触るな」 自分を見下ろす彼の目はまるでゴミでも見るかのようだ 「....みぃ...」 「荷物もって、帰る支度して」 手を差し伸べてくれるわけでもなく、彼は冷たく言い放つ それでもユウはふるふると小さく首を振って、か細い声で呟いた 「やっ...なの...いっしょ...する」 帰りたくない...それだけを伝えたくてユウは怖々とつっかえながら言葉にした 「みぃくんっ...とっ...おとまり..「あのさぁ」 ミツルはユウの言葉を全部聞くまでもなく、口を挟んだ 「誰かの痕なんかつけた奴と一緒にいたくないんだけど」 「ぅ...?」 「なんで分かんないの?どこまでバカなんだよ!?」 何度もバカだと言われたユウはきゅっと口を噤んで黙り込んでしまった これ以上、彼を怒らせたくなかったから 浴びせられる罵倒に耳を塞ぎたくなるのを我慢していると、ようやく部屋にインターホンが鳴り響いた

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