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椎名は仕事を片付けながら、二人の様子を観察していた
ユウが落ち込んでいると聞いた時のマナトのほんの少し見せた表情が気になる
まるでこうなることを望んでいたような....ちょっとした悪戯も、ユウとミツルが仲違いするよう狙ってしたのだとしたらたちが悪い
たんなる悪ふざけならいいのだけれど、できればマナトと二人きりで話す時間が持てればいいなと考えていた
千春ちゃんにユウくんの事、お願いしようかな....
椎名はある程度仕事を終えるといつものように書類をまとめて、涼介の元へ届けるために立ち上がる
今はできるだけ二人っきりにさせたくはなかったけれど、これも仕事だから仕方ない
「ちょっと席外すけどすぐ戻ってくるからね」
「はぁぁいっ」
ユウはマナトのそばでまるっきり安心しきった笑顔を向けた
人を疑うことを知らないユウは純粋にマナトが来てくれたことを喜んでいるし、できればマナトとはいい関係を築いてほしい
「マナトくん、ユウくんの事見ててね?」
さりげなく諭すように告げた椎名にマナトは無言のまま小さく頷いた
書類を片手に社長室まで向かうためエレベーターに乗り込むと社員の1人に声をかけられた
「椎名先生っ!!」
「お疲れ様、どうかした?」
「今、社長出ちゃってまして、先生の書類、確認するようにって...」
それによると涼介は急きょ、トラブルがあって取引先まで出かけてしまったらしい
椎名とのいつもの仕事を自分に任せていったというのだ
となると、必然的に千春も涼介と一緒だ
千春にユウを任せてマナトとの時間を作りたかったのだけれど、それはまたの機会にするしかないなさそうだ
「あ、これですね?」
代わりを頼まれた社員が書類を受け取ると、椎名は必要なことを伝えていく
「あ、そうなんだけど、ここがね」
「え?あ...これですか?」
「じゃなくて、ここなんだけど」
いつもと勝手が違うせいで、思うように事が進まない
これはいつもより時間がかかりそうだ
椎名はできるだけ早く2人の元に戻ろうと仕事を急がせた
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