マナトが次々と言ってくる言葉はユウの知らない言葉ばかりで頭が追いつかない 「えっと...えっと...」 頭の中がグルグルと渦を巻いたようになって真っ白になっていく こんな時、いつも思う ーーみぃくんもせんせぇもみんなみんなユウに分かるように簡単な言葉でお話してくれてるんだってこと 本当のお話はもっと難しくて、もっとたくさんあるってこと みぃくんやせんせぇが自分と離れて会話を始めると途端に分からなくなってしまう 分かってるつもりでも本当は何一つ理解出来ていないということ 「マナくん、すごいねぇ」 「は！？」 ユウはのんびりとした口調でマナトに笑いかけるとその突拍子もない答えにマナトはガクッと身体を傾けた 「何がだよっ！！」 「えっと...えっとね.....なんでも分かるの、おとなっ...みたい」 マナトの話す言葉はまるで大人のようだとユウは思う 流れるような速さで次々と難しい言葉を簡単に口にする そして、そのことを感心するのと同時にユウは不安を覚えるのだ いつか自分もマナトのように話ができるようになるんだろうか 椎名ともミツルとも対等に会話し、分からないことを怒られたりしなくなって、なんでもできるようになるんだろうか それはあとどのくらい頑張ればいいのだろうか ユウに唯一分かることは......それが近い未来ではないということ ーーだってこの間も彼がなぜ怒ってしまったのか未だに理解できない 考えても考えても分からない ......でも本当は考えているようで考えてないのかもしれない だって自分の頭の中は空っぽだもの どれだけ頑張って覚えても、まるで穴が空いてるようにポロポロと抜け落ちて分からなくなってしまう 好きな人の言葉も分からないのにみんなみたいになれるわけない 「いいなぁ...マナくん」 「は？」 「ユウもマナくんみたい....なりたいな」 屈託なく笑いながらユウはマナトに憧れにも似た眼差しを向けた