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、
「なんでケンカしたか分かってないわけ!?」
「....うん」
「じゃあ、なんで怒ってるかも分かんないわけだっ!?」
「....うん」
「じゃあ、お前の間違いってなんだよ?!」
「.....わかんない」
それを聞いたマナトは深いため息をつくと机に突っ伏してうなだれた
こいつ....バカすぎ....
結局ユウはキスマークの存在もその意味も、ケンカの理由も何一つ分かっていなかったのだ
それでは”話せばわかる”なんてこともできない
マナト的には浮気の一つでも疑われて言い合いになってくれたらそれで充分だったけれど
こんなにもユウ自身が理解できてないとなるとなんだか不本意のような気さえしてくる
ーーでもそうなると......
「でもさ、分かんねぇのに、なんで間違えたって思うの?」
ユウの言う"間違えた"とはどういうことなのだろう
取り繕った言い訳でもしたのだろうか
「....えっと....」
マナトの問いかけにユウは頭を揺らしながら考え込んでいる
そして大きな目をぱちくりさせたかと思うとようやく口を開いた
「みぃくん...まちがえないもん」
それはユウの精一杯分かる範囲でやっと導き出した答えだった
みぃくんは間違えない
だから怒るのはきっと自分が間違いを犯したからだ
それが何かは分からない
だけど、それはいつもの事
自分はいつでも正しい事が選べない
"彼は間違えない"と言ったユウのまっすぐの瞳を見ているとマナトの胸がズキリと音をたてる
その曇りのない目はまるで大好きな人がすぐそこにいるような口ぶりで、マナトは自分の知りえない”信頼”というものを見せつけられた気がした
たとえケンカをしても二人の絆が壊れることはない
マナトのちょっとしたいたずらなど大した事ではないのだとといわれているようだった
「....っ...でも怒ってるんだろ?そいつっ!!どうするんだよっ.」
「う...うーん....どうしよぉ」
......といってもユウにはどうすることもできない
ミツルと会うのは週一回と決まっている
もっと会いたいなんて言ってはいけない約束なのだ
今、彼がどうしているかもまだ怒っているのかもユウには何一つ分からない
できるのは次に会う時までに彼の怒りが収まっているのを祈るだけ
また会いたいと思ってもらえるのを信じるだけだ
考えれば考えるほど俯いていくユウにマナトは思いがけないことを言いだした
「なぁ、今からみぃくんに会いにいかない?」
「....え?」
思わず顔を上げたユウの目はさっきまでとは打って変わって期待と驚きに満ちていた
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