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路肩に大きくて真っ黒なバンが止まる
窓が半分開いてそこから顔を出す相手にマナトは驚きの声を上げた
「樹さんっ!!」
偶然通りかかったのはマナトの悪友達
後ろの窓も開き、見知った顔が次々と声をかける
「こんなとこで何してんだよ」
「超偶然じゃんっ!!」
そして偶然の再会に喜ぶ声も一通り終えるとみんなの視線がマナトを通り越して後ろへ注がれた
「....マナト、その子誰?」
樹の一言にマナトはギクリと顔を強張らせた
みんなの視線の先にはわけも分からずぽつんとたたずむユウがいる
「あー....えっと....」
友達でもない、知り合い...とでもいうのか
狼狽えるマナトに仲間は容赦なく次々に車からヤジを飛ばしてくる
「ちっちゃ....なに?お前、今度は年下に狙い変えたの?」
「あはは、ホントだ、かわいいーっ!!」
それはからかい半分,興味本意半分のなんとも下世話な笑い方だった
ーーだから誰にも見られたくなかったんだよっ!!
視線集中のユウは初めてのことに驚いて固まったままマナトの後ろに身を隠すようにしている
すると樹が仲間を牽制するように声をあげた
「お前らなぁ、うるせーぞ、その子、ビビってんじゃねぇか」
「「.....」」
樹の一言に仲間たちはピタリとからかうのをやめてバツの悪そうな顔を浮かべた
そして樹は窓から乗り出すとユウに向かってニコリと微笑む
「ごめんね?びっくりしちゃったよね?」
「う....?」
「こいつらも悪気があったわけじゃないから、許してやって?」
軽く手を挙げながらユウに向かって詫びを入れる
それからマナトにも"ごめん"と手を顔の前で振ってみせた
樹がみんなを黙らせてくれたことで、マナトは余計な事を話さずにすんだ
樹のこういう所がマナトは好きだった
仲間とは違う、一歩先を行く大人の対応力に憧れてさえいた
「じゃ、俺らこれから出かけるから、またなっ」
そう言って樹が窓を閉めようとすると、マナトは慌てて車に飛びついた
「待って、俺も行くっ!!連れてって!!」
「は?だってお前、その子どうすんだよ」
「---ちょっと待ってて!!」
マナトは急いで車のそばから離れようとユウの腕を引っ張っていく
「ユウっ!!お前ここで待ってろ!!いいな?」
「マナく...?」
ユウと2人でいるよりも樹といる方がよっぽど有意義に過ごせると踏んだマナトはまたしてもユウに嘘をついた
「ここにみぃくん呼んできてやるから!!な!?いいだろ?」
マナトの嘘は次から次へのユウを翻弄していく
「みぃくん...くる?」
「おう!!呼んでくるからさっ、それまでここで待っててくれよ!」
「わ...わかったぁ...」
不安げ表情を浮かべながらユウは素直に頷いた
ユウに人を疑うことはできない
大事に守られている中でそんな必要がないからだ
「よしっ!!じゃあ、いい子にしてろよ!」
「うんっ!!」
マナトはユウを無理やり納得させるとさっそく車に飛び乗った
「オッケー!樹さんっ!!行こっ!!」
「マジでいいの?」
置き去りにする事にさすがの樹も心配そうに声をかけたがマナトはヘラヘラと笑いながら答えた
「いーの、いーの、だってあいつバカだもん」
どうにかして傷つけてやりたかったから丁度良かった
そのうち嘘だったって分かってオフィスへ戻るだろう
ここからはそう離れてないし、来た道は単純だ
たいしたことないーーーー
走りだした車のサイドミラーをチラリと見ると不安げなユウの姿が小さくなっていくのが映った
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