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大通りに一人残されたユウはすることもなく、そばにあったガードレールに腰かけて、流れるように通り過ぎる人達を眺めていた
「いっぱい....」
人がいっぱいいる
みんな知らない人ばかり
早足で歩いて忙しそう
なんだか自分の周りだけ時が止まっているように感じた
そんなに早く歩いたり、たくさんの事を考えたりするのは苦手だ
「みぃくん...まだかなぁ」
ため息をつきながら、ミツルの事を思い浮かべる
まだ×印が足りないのに会える事が嬉しかった
会えたらなんて言おうかなぁ...なんて1人で考える
”あいたかった”
”きてくれてうれしい”
それから...それから...
”このまえは...ごめんなさい”
前回の出来事がユウの頭の中を巡る
酷く怒らせてしまった事がユウの中では今も引っかかって消化できずにいた
まだ怒ってるかなぁ...
みぃくんに会えたらいっぱいごめんなさいをしよう
すぐには許してもらえないかもしれないけど、がんばってお話できたら”もういいよ”って言ってくれるかもしれない
それで、もし...もし、許してもらえたら
どうして怒ったのかちゃんと教えてもらおうと思う
もう2度と間違えないようにしたい
みぃくんには笑っていてほしいから
キョロキョロ辺りを見渡してはいるはずもないミツルの姿を探す
自分ならどれだけの人混みの中でも彼を見つける事が出来ると思うのに
「あいたい...な」
けれどどれだけ待ってもミツルは現れない
その場から動くこともできずにユウはただひたすら彼を待ち続けていた
あたりは日が傾き、冷たい風が吹き始める
みぃくん、どうしたのかなぁ...
待てど暮らせど現れないミツルにユウは少し不安になる
マナトに急き立てられるように飛び出してしまったせいで、上着一つ持ち合わせていなかった
腕をさすりながらぬいぐるみを置いてきた事を後悔した
とりさんと一緒にくればよかった...
ガードレールに腰掛けて俯きながら宙に浮いた足をプラプラさせていると急に大きな声が聞こえた
「ポチ!!」
ビックリして顔を上げるユウの目の前には、犬を連れた女の人が立っていた
「ポチ!だめよっ!ほら、帰りましょう?」
困ったようにリードを引くその先には赤い首輪をつけた犬
フサフサの毛並みを揺らしながら奪われた自由を取り戻そうと必死になっている
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