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降りしきる雨の中、それを浴びるようにしながらユウは空を見上げていた 「あめだぁ...」 身体はびょしょぬれで下着の中まで染みているというのにその声はうれしそうに弾んでいる ーー雨が降るとせんせぇはすぐに傘をさしてしまう 急いでお家に帰って、それからお外は出ちゃダメっていう だからちゃんと見たことがなかったの ”雨”ってどこから流れてくるのかな? どんな味がして、どんな匂いがするのかな 甘かったり、苦かったりするのかな どうして雨だとみんな困った顔をするのかな 雨はこんなにキラキラしていてキレイなのに..... ずっとずっと知りたかったの あの部屋に一人きりだった頃から、ずっと... あの部屋で空を眺めるしかなかった自分が今はこうして雨を実際に触っているなんて夢みたいだ みぃくんが来たら教えてあげよう あのね... あめはお水の味がするんだよ 褒めてくれるかな エライね、いい子だねって ユウはお利口だねって言ってくれたら嬉しいなぁ 「ユウ!!!!」 雨音をかき消すように大きな声が響いた 「お前、こんな所でなにやってんだよっ!!」 ユウが振り向くよりもはやく、腕をつかまれて無理やり身体ごと反転させられる ユウの目の前にいたのは待ち焦がれていたミツルではなく涼介だった 「りょおっ...くん?」 パチクリしながら見上げるユウを雨から庇うようにしながら涼介は辺りを見渡している 「バカやろう!こんなに濡れて...お前1人か?!マサキは?!」 「あっ...あ...」 「ああっ!もういいやっ!!とにかく、帰るぞっ!!風邪引いたら大変だっ...」 車に戻ろうと手を引く涼介をユウは慌てて振り払った 「やっ」 ふるふると顔を横に振りながら後ずさりするユウに涼介は眉間に皺をよせる 「あぁっ!?なに言ってんだよ」 こんなに濡れてまで一体何をしていたのだろう 帰りたくないとはどういうことだろうか.... 疑問を口にしようとした涼介は次のユウの一言に耳を疑った 「みぃくんっ...まってるのっ」 「なにっ!?」 「みぃくん、ここでまってるのっ」 「なに言ってんだよ、今日はミツルに会う日じゃねぇだろ!?」 ユウがミツルと会うのは週末だけだ それなのにこんな所で椎名も抜きで会うなんてことはあるわけがない これは一体どういうことなのかと涼介は訝しむ 「でもっ...くるのっ、マナくんっ...いったもん」

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