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オフィスに戻ると椎名が泣きそうな顔でユウを待ち構えていた 「こんなに濡れて、どれだけ心配したと思ってるのっ!!」 車を降りるなり力いっぱい抱きしめられたユウはまたしても自分の愚かさに心苦しくなった 椎名もまたこんな風にユウに声を荒げることなど今の今まで一度もなかったのだ 「どうして勝手にお外に出たりしたのっ!!」 「あぅ...」 「お前が言えた義理かよ、監督不行き届きだ!」 「2人ともユウくんの前でやめてください!」 ああでもない、こうでもないと大人達の激しい会話がユウの真上を飛び交う 「つーか、マナトの奴...どこ行ったんだよ!」 涼介は思い出したかのように怒りを露わにした 「あのガキ、ユウを連れだしてそのまま放置するなんて....見つけたら殺してやる!!」 拳を握り締める涼介の手は燃えるような怒りに震えて収まりそうもない 「とりあえず、部屋に戻って着替えよう、話はそれからだ」 ーーー医務室に戻ってから急いで着替えさせる間もユウは申し訳なさそうに俯いたままだった 言いつけを守らず、心配をかけてしまったことをどうしたらいいか分からないのだ 「ユウくん、ほらホットミルク入れたから、飲んで?温まるよ」 椎名に手渡されたマグカップを両手で受け取るとホッとするような湯気が昇っている 火傷しないようにゆっくりと口をつけ、コクンと喉に流し込むと胸の中まで優しい暖かさが広がった 寒さで青ざめていた頬も次第にピンク色に代わり、それを見た椎名も胸を一安心させた 「---それで?ユウくん、マナトくんはどこへ行ったか分かる?」 「う...?えっと、えっと....わ...わかんない」 ユウはマナトにミツルと会わせてもらえるといわれてそこで待っていたこと マナトは偶然会った知り合いと一緒にどこかへ行ってしまったことを何度もつっかえつっかえしながらやっとの事で説明した 「友達って....どうせろくな奴じゃねえだろ」 吐き捨てるように涼介が言ったところで今まで静かに話を聞いていた千春が口を開いた 「あの...ちょっとお二人に見ていただきたいものがあるんですが」 そう言っておもむろにカバンの中から何やら書類のようなものを取り出して、二人に手渡す 涼介と椎名は受け取ってその表に書かれた文字を見るなり顔を見合わせた 書類にかかれた文字は【折原愛人・身辺調査報告書】 「千春ちゃんっ!!これっ..調べたの?!」 「マジかよ!普通ここまでするかぁ!?本当に悪趣味だな」 二人の驚きにも動じることなく千春は飄々と答える 「当たり前でしょう?得体のしれない子供がうちに出入りしているんですから」 「お前、だからってなぁっ!!」 プライバシーってもんがあるだろうが!!と涼介が反論しかけると千春は眉を寄せて睨みながら声を荒げた 「社長が誰を囲おうと知ったこっちゃないけど、あんなガキのせいで会社に不利益が生じたら迷惑被るのはこっちなんだよっ!!」 ドスの聞いた声は上品に着飾ったその裏に隠れた本性が見える 千春は有能な秘書だ なにを置いても仕事を優先にしている彼女だからこそ会社の先を見越して、それがただの埃だとしても落としておきたいのだ 千春はコホンッと咳をすると荒れた素顔を一瞬にして消し去り、いつもの品行方正な笑顔を浮かべる 「私は会社を守るためならなんでもしますよ」 ニコリと形のいい唇が微笑むのを涼介も椎名も一言も言い返す事も出来ずに黙っていた 千春の言っていることが正しい事はお互い確認せずとも分かっているからだ 気まずい雰囲気の中、どうしたものかと二人とも目を泳がせているとその沈黙を破ったのはほかならぬユウだった 「--っくしゅんっ!!」 ずずっと鼻をすすってはまたくしゃみを始めるユウに静まり返った医務室が急に慌ただしくなる 「大変!!今日はもうユウくんと帰ったほうがいいんじゃないですか?」 「でも、まだ仕事が....」 「千春の言う通りだ、ユウがかわいそうだから帰れ」 すると千春は涼介の襟首をひっ掴んで引き寄せると耳元で冷たく囁いた 「社長もで・す・よ!?」 「--なんで俺まで!?」 「そんなびしょ濡れで仕事ができるわけないでしょう?!残りは私がやりますからお帰り下さい」 ピシャリと撥ね付けられた涼介は反論するのも恐ろしい!!とばかりにすごすごと椎名とユウの後ろを付いて行った

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