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溶けていく心

大人ぶって虚勢を張って、誰にも本当の姿を見せられなかったマナト やっと少ないながらも本音を漏らしたというのにそれでも彼の目はまだまだ臨戦態勢で今にも噛みつきそうだ 17歳の子供がそんな風になるには一体どれくらいの苦労が必要なのか椎名には計り知れなかった それでもやっと見せてくれた本当の姿をこのまま見過ごすわけにはいかなかった マナトが今まで関わってきたような無関心な人間にはなりたくはない 「ずっと一人で頑張ってきたんだね、気づかなくてごめんね」 「...」 「でももう頑張らなくていいんだよ?もっと周りに頼りなさい、君はまだ子供なんだ」 無理やり大人になるしかなかったマナトには難しいことかもしれない 今まで試みては受け入れてもらえなかった自分をさらけ出すことはきっと勇気がいる それでも椎名は知ってほしかった 自分たちは少なくとも味方だということ マナトが欲しがるような人の暖かさや優しさ、愛される幸せはすぐそこにあるということ マナトはそれを知らないだけだということを それはまるで何も知らず彼だけしかこの世にはいないのだと思っていたユウのようにーー 「自分には誰もいないなんてそんな寂しいこと言わないでよ」 そう言って肩に触れる椎名の手は暖かく、その体温はマナトの胸に流れてくる 凍っていた心を内側から溶かすようにトクン、トクンと脈打っては奥に隠れた本音を温め続けた 本当に信じていいのだろうか 今までと同じように愛想を尽かされて放り出されてしまわないか..... 今までの過去が邪魔をしてマナトに椎名を受け入れることを迷わせ、躊躇させる それに椎名達が大切にしているユウをあんな形で傷つけてしまったことも、素直になれない理由の一つだった 「ユウにっ...ひどい事したのに.....許せるの?」 椎名の目をしっかり見ることもできず、マナトは恐る恐る問いかけた マナト自身も本当は分かっているのだ 自分の怒りはユウに対しての単なる嫉妬で本人にはなんの落ち度もない 理不尽な怒りをぶつけて傷つけることで、自分を保っていた そんな自分がこれからもみんなのそばにいることなど本当に可能なのか 涼介の怒りの原因もそこにあるのに... すると椎名はマナトを覗き込むように問いかけた 「マナトくんはユウくんが羨ましい?」 思いがけない質問にマナトは一瞬言葉を失い椎名を見つめた

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