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椎名の問いかけにマナトは自分のすべてがお見通しだった事に狼狽えていた どれだけの嘘を並べても強がって見せても見透かされているならもう隠しようがない マナトは自分の心と向きうように深呼吸して目を閉じる ユウが羨ましい....羨ましくないと言ったら嘘になる ユウはいつもニコニコ笑顔で素直でかわいくてまるで天使みたいだ だからみんなに好かる理由が分かる、愛される理由が分かる だけど、本当に羨ましいのはみんなに愛されることより、みんなの前で素直でいられることだ 本当の自分を見せられる相手がいる、嘘なんてつかなくても受け止めてくれる人がいる だから安心して本音をさらけ出し、素直なままでいられるのだ 無駄に強がって悪態ばかりついて嘘で固めた自分とは大違いだ 「俺...ユウみたいになれないっ!口悪いしワガママだし...」 マナトは拳をぎゅっと握って床を睨みつける やっぱり自分にはいいところなんて一つもない 考えれば考えるほどユウとの違いが明白で愛されない理由に気づかされる そんなマナトに椎名はまるで独り言のように呟いた 「......でもきっとユウくんはマナトくんのそういう所が好きなんだろうなぁ」 意外すぎる言葉にマナトは勢いよく顔をあげた 「ユウが俺を?!ありえないしっ!!」 目を丸くして首を振るマナトに椎名はクスクス笑いながら答える 「本当だよ?マナトくんが遊びに来るの楽しみにしてるみたいだし、きっと憧れてるんだと思うんだ。なんでもはっきり言える君に」 「なんで....」 なんで俺!?...と言いかけた時、ふとマナトは以前ユウと会話したことを思い出した ”マナくんはいいなぁ...おとなみたい” あの時は何にも分かってないくせに!!ってムカついて理由も聞こうとしなかったけれど.... 「それって...ユウがあんな感じなのと関係...あるの?」 すると椎名は今まで穏やかだった顔を少しだけ引き締めてマナトを見据えた 「マナトくん、ユウくんはね、決して君が羨ましがるような生き方はしてきてないんだよ?」 「どういう...意味?」 「詳しくは僕の口から言えることじゃないけど.....ユウくんも君と同じなんだよ」 愛されたくて必死なのはマナトだけではない ユウもまた孤独の中でミツルに愛されたくて戦ってきた 2人の違いはマナトはそれを怒りで表現し、ユウはひたすら笑顔を見せることで傷ついていないフリをする 正反対に見える2人の共通点は自分に自信がないところだ 2人とも自分にはなんの価値もないと思い込んでいる その思い込みは、深く心に刻まれて簡単には消えそうにない だから誰かが時間をかけてそうではない事を教えてあげなければならない 自分が他の誰でもない唯一無二の存在である事を 「僕たちは君の味方だよ?裏切ったりなんかしない、絶対に!」 「......」 「少なくとも僕は君のことをもっと知りたいし、力になりたいって本気で思っている」 気が付くと椎名の顔をはいつの間にかまた穏やかな顔に戻っていてマナトは吸い寄せられるようにその目をじっと見つめていた 「マナトくんはどうしたい?」 これからも自分たちといるかそれとも離れてもう二度と会わないか 椎名は2択の選択をマナトに迫っていた 決めるのはマナト自身 けれどマナトが椎名達を選べば今まで必死に積み上げてきた心の壁を壊さないといけない 全てをさらけ出して丸裸になるのことが本当にできるのか マナトは誰かに期待して裏切られるのはもう嫌なのだ それが怖くてずっとこんな風に生きてきたのに.... 「本当に....信じて...いいの....?」 不安げに呟くマナトに椎名はもう一歩近づくように続けた 「僕はマナトくんを信じるから君も僕を信じて」 マナトは揺れ動く瞳をただ、椎名に向けているだけだった

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