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椎名がいなくなり、部屋の中は急に静まり返ったようになった マナトは身を硬くしながらユウにかける言葉を頭の中で反芻する ”今までごめん” たった一言がどうしてこんなにも出てこないのか..... マナトはギリギリと奥歯を噛みしめながら思い通りにならない自分に苛立ちを見せる ユウはそんなマナトをぽかんとしながら見つめていた いつまでたっても話始めないし、眉間に皺を寄せてまるで怒っているような形相に次第に不安を募らせていく どうしたんだろう....マナくん なにかおこっているのかなぁ...... なにか怒らせるようなことをしちゃったのかもしれない 自分でもよく分からない内に怒らせてしまうのはよくある事だ だってみぃくんはいつもいつも怒っているから... 不安になったユウはいっそのこと何を怒っているのか教えてもらおうとマナトに向き直した そうやってみんなに自分の悪いところを教えてもらえればいい子になれるかもしれない 「あの....」 「ユウ!!!ごめんっ!!」 恐る恐る伺おうとしたユウの小さな声はマナトの大きな声によってかき消されてしまった 思いもよらないマナトの言葉にユウはますますぽかんと口を開ける マナトはユウがまだ理解しきれていない内に矢継ぎ早にごめんと何度も繰り返した 「本当にごめん!いっぱいごめん!!えっと.....とにかくごめん!!」 深々と身体を折ってユウから声をかけられるまでマナトは顔を上げなかった ユウが怒るところなど想像できないが、殴られたり罵倒されたりも覚悟の上でマナトはぎゅっと目を瞑る 自分はそれだけのことをしたと自覚はある けれどユウから返ってきた言葉はマナトの想像よりさらに上を行っていた 「な.....なにが...?」 拍子抜けしそうなユウの返事にマナトは頭を挙げるとそのままユウに詰め寄った 「は!?なにがって....いろいろだよっ!!俺ひどいこと言ったし、したじゃん!?」 「う?...え...?」 「だーからぁーっ!!お前に嘘ついたり、バカにしたりしたのに怒ってないの?!」 マナトがそこまで説明してもユウはきょとんとしたまま固まっている ここまで来ると無邪気というより無知だ 「はぁぁー.....頭痛い」 マナトは思わず脱帽してため息をついた どれだけ俺が悩んできたと思うんだよ!!と言ってやりたくもなったが、それでもユウの天然ぶりには救われた もちろん理解できないから許してもらえたとか、もう全部チャラになったとかそんな風には思っていない だけど、ユウを見ていると素直になるってもしかしたらいい事なのかもしれないと思えた 飾りもしない、作ることもしない本当の自分で居られることって本当は幸せなんじゃないか... あれだけ嫌いだったユウにこんな気持ちになるのはようやく自分の気持ちに気づけたからかもしれない だけどやっぱり、簡単に人を信じる事は出来ないし、全部をさらけ出すのは難しい だからどうせなら最初に信じる相手はユウがいい だってユウは今まで自分が出会ってきた人達の中で、1番素直な奴だからーーー 胸に秘めた思いを今さらユウに告げることはできないけれどマナトは少しでも詫びる気持ちを伝えたくてユウに問いかける 「お前なんかねぇの?!言いたいこととかさ!これじゃ俺の気が収まらない」 「う?えっと....えっと.....」 ユウは目をくるくるさせながら考え込んで無理なマナトの問いかけに答えようとしている ユウにはそもそも意地悪される概念もなければ怒るということもしたことがないからそれも無理な注文だった 「うーんと...えっと....えっとねぇ」 その時どうしようかと悩んだユウの視線がテーブルに落ちる そこにはさっきまで遊んでいた折り紙がそのままになっていた ユウはそれを一枚取ると思い切ってマナトに向かって差し出した 「あのね...これ...とりさんつくって...くれる?」 「は?!」 ユウからの以外な申し出にマナトは耳を疑った 「とり!?...とりって....鶴のこと!?」 「う...うん...このとりさん」 指さす先には間違いなく折り鶴の写真 ユウはマナトに折り鶴を折ってほしいと頼みこんでいるのだ 「....」 せっかく自分を罵倒するチャンスなのに もしくは何か買ってこいとか、ほかにも考えればいくらでもありそうなのにユウの願いは折り鶴 なんともその幼稚な願いに「バカじゃねぇの!?」と言いそうになってマナトは慌てて口をつぐんだ 簡単な願いもユウが望むならそれが1番だ 「...ったく!貸してみろよ!!」 そう言うとマナトはユウの手から折り紙をひったくるように取り上げた

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