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車に乗り込みミツルのマンションへと急ぐ ユウは膝に置いたリュックを抱きしめように抱えながらぼんやりと流れる景色を眺めていた 大好きな彼に会えるのに少しだけ不安な気持ちになるのはどうしてだろう..... その原因は今だ消えない先週の記憶 訳もわからぬまま怒鳴られ責め立てられ、その挙句帰されてしまった その理由は今だに分からず、ユウの中では消化できずに心に引っかかったままだ 「くしゅんっ!」 「あらら、大丈夫?やっぱり風邪かなぁ、今日は夜更かしさせないようにミツルくんに言わないと」 本来なら今日は日帰りのはずなのだが、先週があんなことになってしまい落ち込んでいたユウのために椎名は今日も宿泊許可を出した それを聞いたユウは涙目になって喜んでいて、椎名も一安心していた それなのに、何故か今日のユウは少し顔が曇っているように見える 椎名は気になってユウに声をかけた 「ユウくん?どうしたの?元気ない?」 「あっ......」 その反応からしてやはり何かしら不安を抱えているようだ 自ら悩みを打ち明ける事のできないユウに椎名は優しく問いかけた するとユウは不安げ瞳を潤ませて言いにくそうにつぶやく 「みぃくん...まだ怒っているかなぁ....」 ミツルとの連絡は椎名が受けているためにユウは今の現状が把握できない だから今、彼が怒っているのか、許してくれているのかが分からないのだ 椎名はあの後、ミツルと電話で話をしキチンと誤解を解いていた けれどそれをユウに説明する前にマナトの件で時間を取られてしまいその機会を逃してしまっていたのだ そのことを思い出した椎名は自分の落ち度でユウを悩ませていた事を知り慌てふためいた 「そっか、ごめんね、不安だったよね!でも心配ないよ!!あれはちょっと誤解だったから」 「ゴカイ...?」 「もう怒ってないし、ミツルくんもユウくんに会えるの楽しみにしているよ」 ユウはぱちくりと瞬きを繰り返しながら「ほんと?」と半信半疑な顔を向けてくる 「本当だよ!大丈夫!!もう大丈夫だよ」 椎名が念を押すように"大丈夫"というとユウはやっと強張った顔を緩ませた ユウにとって椎名の”大丈夫”は安定剤のようなものだ それを聞けばどんなに辛いことも苦しいことも頑張れる気がする 今だって不安だった気持ちがすぅっと消えていった ユウはきゅっと口の端を引き締めると、いつもの景色を確認するように窓を見つめた もうすぐ、彼の家に着く そしたら今度こそ彼と一緒にずっといられるのだ だから今日はちゃんとしなきゃ..... この間みたいに怒られないようにしなくちゃ 大丈夫 大丈夫 せんせぇは大丈夫っていったもん だから平気 今日は仲良しでいられるもん ユウは自分に言い聞かせるように心に誓うとこっそり拳を握りしめた

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