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部屋につくといつもと同じ笑顔でミツルは2人を迎え入れた
「ユウ」
普段と変わらない低い声で名前を呼ばれるとユウの気持ちは”会いたかった”と一気に湧き上がった
さっきまでの心の中に渦巻いていた不安も嘘のように消えていく
「みぃくん!!」
ユウはミツルに抱きついて一週間分の思いを込めて彼の名前を呼んだ
ミツルはそれに答えるようにユウの身体を抱き止めて、力を込めようとしたところで動きを止めた
「ユウ...お前どうしたの?」
「う?」
何かに気が付いたようにミツルはそう言うと腰に巻き付いたユウを引き剥がす
そしてそのまましゃがみ込むとユウをマジマジと見つめて大きなため息をついた
「先生、今日中止。こいつ熱ある」
「えっ!?」
急なミツルの言葉に椎名は慌ててユウの額に手を当ててみる
しかし、触れた額は少し熱い気もするが、熱があるとまでは言えない気がする....
心配ないと考える椎名に対してミツルは断固として言い張った
「ダメ、こういう時すぐ高くなるから」
ユウの事だけ見つめ続けてきたミツルには椎名でも気がつかないちょっとした変化も手に取るように分かる
だから今までの経験上、このままだと夜になる頃には高い熱が出るというのだ
「こいつ連れて帰って家で休ませてよ」
残念がるわけでもなくあっさりとそう告げるミツルに椎名は肩を竦める
「でもなぁ、ユウくん楽しみにしてたんだよ?」
前回に引き続き今日も中止となればユウが塞ぎ込んでしまうのは目に見えている
それでなくてもこの一週間ユウは人知れず悩んでいた
不本意ながらそれに対して十分にケアしきれなかったこともあり、椎名はできれば彼と過ごさせてやりたかった
「ちょっといろいろあったから...ミツルくんがそばにいてあげたほうがいいと思うんだ」
「俺がいたって治らない」
「そうゆう事じゃなくて!ユウくんミツルくんが怒ってないかってずっと心配してたんだよ?これ以上不安にさせないであげてよ」
2人が言いあっている間、ユウは一人でぽつんとミツルのそばに立っていた
抱きしめてもらえるはずの体が寂しくて、ただぼんやりと見上げては理解出来ない内容に首を傾ける
ねつ....かえる.....
また帰るの....?
理解出来なくても雲行きが怪しいのはユウでも分かる
たちまち不安になってユウはミツルの服の裾を引っ張った
それに気が付いて振り返るミツルにユウは不安げな瞳を向ける
潤んだ瞳で訴えるのは声にならなくても聞こえてくる
”帰りたくない”
ミツルは少し考え込んでからもう一度大きな声でため息をつくと、ユウの頭をグリグリと撫でる
「分かったよ、でも今日はずっと寝てないとダメだからね」
しぶしぶ了承するミツルにユウはホッとしながら目元を滲ませていた
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