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音がする...ユウが壊れていく音と自分が狂っていく音 力任せに殴ったはずみでユウの身体はリビングの真ん中まで飛んでいた 意識もなく真っ白になった体を引き寄せると異様なほど軽くて驚いた 当たり前か...食事もまともに取らせてないんだから... もしかしたら死んじゃうのかなぁ...なんて現実味のない考えが頭をめぐる 握っても握り返してもらえない手を取ると暖かくて生きてることを実感した 「ユウ...?ユーウ...」 久しぶりにユウの名を口にすると目の奥がツンと痛くなった 本当はずっと呼びたかった...でも呼べば抱きしめたくなって、キスしたくなって、また逆戻りになる 「触ってもいい?キスしたらダメかな...」 コテンと肩にもたれるユウの頬に触れて唇を寄せると血の味が広がった 「ごめんね」 意識がなければ何度だって言えるのに... こんな気持ちになるのは2回目だ 自分のことが心底嫌になったあの日...ユウを初めて抱いた日だ ユウを拾ってから小さなアパートで二人きり、誰かに気づかれやしないかと怯えながらそれでもなんとかやってきた 二人の生活に馴れてきたユウは話せないなりに良く笑って時には頬を膨らませたりなんかして.今よりもっと感情豊かだったような気がする そんな顔がもっともっと見れたいいなと思って今のマンションに来た もっと楽しくてもっと幸せにしてあげたいとその時は確かに思ったはずなんだ... 笑顔で細める瞳が可愛くて、懐いてくれる姿が愛しくていつの間にかユウがすべてになった 一分一秒でも離れたくなくて自分と同じくらいユウの瞳に映るのが俺だけだったらいいと思った 新しい広くなったこの部屋で、あのベットで俺は自分の欲をユウに押し付けた 色付いていく肌、恐怖に縋りつく小さな手、華奢で折れてしまいそうな身体 覆いかぶさる俺の腕の間でユウは必死になってその痛みに耐えていた 罪悪感、背徳感、嫌悪感...ありとあらゆる負の感情に混じって確実に感じた繋がれた事への高揚感 「好きだよ、ユウ...」 初めてそう言った時ユウはどんな顔してたんだっけ... ダメだと思っても一度味わってしまえば、タガが外れたように求めて、転がるように出来上がっていた主従関係 身体を重ねる意味すらわからないユウに無理やり受け入れさせて得たものは猜疑心だった 受け入れてもらえるほど膨らんでいく不安は傷つける事へ繋がっていく こんな自分が愛されるわけない 分かっているからこそやめられない 「こんな事してごめん」 常に泣き続けたせいで爛れてしまった目元をなぞるとふと眉毛が下がったように見えた 「バカだな...」 都合のいいように見えてしまう自分に呆れてしまう "安心してるみたい"だなんてありえないのに...

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