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リビングまで来るとそこに転がしたはずのユウの姿がない 「あれ?」 辺りを見渡して彼は首をひねる まだ動ける力が残ってたのか... 「ポチー?どーこー?」 ソファーの裏やカーテンの間を覗いてみたけれどそこにもいない 「あれ?」 ならあの部屋か...と今度はユウの部屋を開けるがそこにも見つからない 飾り毛のない真っ白の部屋を見た時、初めて胸がドクンとなった 「ポチ?!」 どこかに隠れるなんて知恵がそもそもユウにはないのだ 帰った時部屋に鍵は掛かっていた 自ら出て行く事はないだろうが、この部屋の一体どこに隠れる所があるというのだろう ミツルは慌てたように部屋を見渡して、キッチンに向かうと履いていたスリッパの下でパキンと小さな音がした 「...?」 なんだ?と思いそれを拾い上げると小さなガラスの破片 不審に思いながらキッチンに入り彼は愕然とした 「なんっ...だ?!これ!!」 食器棚の扉が開いて中身が散々に床に散らばって足の踏み場もないほどだった 地震でもあったのか?こんなのポチがもし踏んだら... 「危な...」 ガラスを拾い上げようとしゃがみこんだ彼はギクリと手を止めた 割れたガラスに混じる点々とした赤い沁み 「ユウ!!!」 青ざめたミツルは大きな声でユウの名を呼んだ 床に溢れる血の跡を辿るとそれは寝室まで続いていた 「ユウいるの!?」 彼は乱暴にドアを開けて怒鳴り込む シンと静まりかえった寝室 薄暗い中に置かれたベッドのシーツが小さいけれど不自然に人の形に盛り上がって見えた 良かった...ここにいた... 「ユウ?なにしてんの?」 ホッしながら声をかけてみたけれど動きはない 「ユーウ?かくれんぼしてるの?」 それでもなんの反応も示さないユウにミツルは焦れたようにシーツを剥ぎ取った 「ユウ!お前、何して...」 言いかけた彼は思わず口を噤んでしまった そこにいたのは小さく縮こまる少年の姿 膝を抱えて丸まる姿は本当に子犬のようで 改めて見るその姿に胸が焦げるような痛みを感じた 「ユウ...」 首元に触れてみるとちゃんと脈も振れて息もしていた 良かった...あったかい... 膝を抱えるようにした足は所々傷がついて血が滲んでいた 踏んだのか...やっぱり... 何があったんだろうとユウを覗き込むと固く抱きしめた腕の中にぬいぐるみを見つけた 位置のズレた棚、割れた食器 あぁ...そうか...これが欲しかったんだ... 勝手に入るなと躾けてあった寝室にそれを連れて逃げてきたの? 怒る理由はたくさんあったけれど、煤けたような顔に幾筋も残る涙の跡を見ると叩き起こす気にはなれなかった 「ボロボロになっちゃったな」 頭をひと撫でしてミツルはそっとシーツをかけた とりあえず今はこのままにしてあげよう せめて夢だけは好きに見せてあげたいから ミツルは寝室を出ようとベッドから静かに離れると寝ているユウが小さな声をあげた 「ん...」

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